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杏菜が去ると、和真は腰をぬかすように。 ソファーにペタンと座り込んだ。 柊生はそれを見て自分もゆっくり隣に座った。 「…終わった…」 柊生が呟いた。 「俺、酷いこと いっぱい言っちゃった」 和真が唇を触りながら言った。 「この人は…俺が何言っても痛くも痒くも ないんだろうなって思って、そしたらつい…」 柊生は和真の手を握って、うん、と相づちをうった。 「そんなわけないのにね、そんな人いないよね。 俺…でしゃばってゴメン…」 「謝るなよ。俺達だけで話してたらきっと ケンカ別れだったよ。杏菜が納得して帰るなんて 思ってなくてビックリしてる」 そう言っても和真はじっとテーブルの上を 見つめていた。 「おまえ、結構あることないこと言ってくれたな」 「…あぁSMプレイの事?」 そう言って少し笑った。 「性癖ちょっとヤバイ奴って思われるくらいが 別れやすいかと思って…誇張して言っちゃった」 柊生は まぁ確かに、と言って笑った。 「で、どうして来たの?」 「…どうしてって…柊生さんが 朝…あんな風に出て行くから…不安だったんだ」 杏菜が居なくなったら「さん」付けに戻っていた。 さっきまでのはやっぱり半分芝居だったんだなと 思った。 柊生と遊びで付き合う うちに本気になり 結婚や妊娠を望むようになったΩの恋人を 演じてくれていたんだ。 「不安だったって?何が? 俺がちゃんと別れられるのか見張りに来たの?」 笑ながら聞くと 違う、と首を振った。 「ただ家に居られなかっただけ。何かしようと 思って来た訳じゃないよホントに…こっそり遠くから 様子が見れたらって…そのくらいの気持ちで… でもここに来て、一緒にいる二人をみたら… 勝手に足が動いて… 気づいたら二人の前に立ってた」 うつむいて話す和真の言葉を聞いているうちに 柊生の胸の奥が熱くなった。 「それって、ヤキモチ?」 バカ、とはぐらかされるだろうと思って言った。 「そうかもね」 和真が握った手に力をこめて 柊生の目を見て笑った。

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