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…
「もったいない…」
二人で乗りこんだエレベーターで、和真はため息を
ついた。
「まぁまぁ たまにはいいじゃん」
2人しかいない広めのエレベーターの中で
柊生が肩を寄せてくる。
「……ゴム無かったらしないよ」
「あるよ、ご心配なく」
速答した柊生に和真が眉を寄せる。
「…何で持ち歩いてんの?」
ー はっ!まずい!これじゃまるで俺が
杏菜とやるために わざわざ持ってきた!
みたいになってる?
「ちょっと待て違う、いつも持つことにしたんだ
この前 車でしそうだっただろ?」
「違うって何が? ってゆうか
…いつの話し?そんな事あったっけ?」
「ほらっ!あのラブホの時」
「…え、あの時?ホントに車で
するつもりだったの? コワッ!
ただの脅し文句かと思ってた」
アホな会話をしているうちにエレベーターが
到着してドアが開いた。
絨毯が敷き詰められた廊下は静かで、人気もなく
思わず声を潜めてしまう。
「あった、ここだ」
柊生がカードキーを差して、電子音が鳴り
重そうなドアが開いた。
部屋はリビングと、寝室が別れていて
壁1面はあろうかという大きな窓の向こうには
都会のビル群の夜景が広がっている。
「俺が前に住んでた部屋より広いじゃん」
和真は呆然と部屋を見回しながら窓際に向かった。
腰の下ほどの高さにある広い窓台に両膝をついて
下をのぞきこんで、高~!と
興奮した声を上げる。
「カズよくそんなに、ガッツリ下見れるな」
和真が振り返ると、柊生はスーツを脱いで
クローゼットにかけながら眉を寄せている。
「柊生さんも来て、見て」
窓台に座って和真がチョイチョイと
手招きをした。
「俺ソコに座るのは無理だぞ」
「高所恐怖?」
「そうだよ、だからわざわざ低層マンション
建てたんだから」
インナーのシャツと下着だけになった柊生が
恐る恐る窓台に両手をついた。
「おぉぉ たっか!」
逃げ腰の柊生を見て和真がクスクス笑った。
「柊生さんも苦手があるんだねぇ」
「当たり前だ!」
笑ながら立ち上がると、和真もコートを脱いで
クローゼットに向かう。
ついでにバスルームを見に行って
洗面台が二つもある!と楽しそうな声が
きこえて来た。
そんな声を聞いてるだけで一緒に笑ってしまう。
少し間をあけて、和真がひょこっと顔を出した。
「一緒に入る?」
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