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目覚めたら部屋は薄明かるくなっていた。 ー あぁカーテンを閉めずに寝たっけ… うっすら開けた目で窓を見ると そこには和真が座って外を見ていた。 すぐに声をかけようとして、できなくて 口をつぐんだ。 その姿があんまり綺麗で 和真の創った静謐な空気を壊したくなくて。 窓に額をつけて、伏し目がちに下界を ながめる表情も。 顎から続く首筋も。 はだけたガウンから無防備に投げ出された 片足も。 窓から入る淡い朝日も。 1枚の画のように完璧に美しかった。 ずっと見ていたいような でも同時に言葉にならない不安もわき上がって 胸の奥がソワソワしはじめる。 声をかけたら消えてしまいそうな… 今までの事は全部 夢だったんじゃないかと そんな風に思わせるほど儚げで 見ているのが怖くなった。 憂いを含んだ様な顔で何を考えているんだろう。 ほんの少し前まで、あんなに何度も愛し合ったのに どうしてそんなに寂しそうなんだろう。 「カズ」 上半身だけ起き上がって声をかけた。 「ん?」 返事と共に、すぐに柊生へ視線を移す様子に ホッとする。 「眠れないの?」 「まさか、喉乾いて起きちゃっただけ 外見たら街が綺麗だったから見惚れてた」 いつもの調子で そう言ってまた外を見る。 「おいで」 布団を持ち上げて中へ誘った。 和真は微笑んで ゆっくり柊生のベッドへ歩く。 きゃしゃな身体を包み込んで 抱きしめて 柊生だけが感じる甘い香りを深く吸い込む。 ー 良かった夢じゃない。 「体へいき?」 「そこらじゅうギシギシいってる」 「…だろうな、今日はフレックスで行くから もう少し寝よ」 「…ん」 抱きしめても胸の奥のざわめきは消えなかった。 でも気のせいだと、思う事にした。 ー 幸せで信じられなくて…不安なんだろう きっとそれだけの事だ。

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