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…
夕方帰ったら、柊生が先に帰宅していた。
ー あれ? 今日は遅くなるから先に寝てろと
言っていたのに…予定が変わったかな?
和真は玄関で靴を脱ぎながら
ただいま、とリビングに向かって言ってみた。
中から返事はなく、リビングも煌々と明かりが
ついているにも関わらず柊生の姿はなかった。
とりあえず手洗いを済ませて、寝室へ向かう。
柊生はベッドで眉間にシワを寄せて辛そうな顔で
眠っていた。
「柊生どうしたの?具合悪い?」
ベッドに座り声をかけた。
まだ6時を回ったばかりなのに
部屋の中は真っ暗だ。
その中で柊生が、うっすら目を開けてうなずく。
「大丈夫?熱?」
そう言いながら額を触ってみると
いつもより遥かに熱い。
「あっついよっ! 体温計っ…」
あわてて立ち上がろうとする和真の手首を
柊生が強く掴んで、ベッドに引き戻す。
「…痛っ!」
凄い力で握られて、和真は小さく叫んだ。
「今日どこ行ってたの?」
驚く和真に、柊生が低い声で聞いてくる。
「え?」
首筋を捕まえて、顔を寄せて深く息を吸い込む。
ー 何か疑われてる?
「今日は…えっと…
昔からよく行くラーメン屋に行って…
あ! そこで偶然 政実に会ったんだ」
「…偶然…」
「うん、、本当に偶然。突然だったから
連絡もしなくてごめんね?」
政実も大好きで、2人でよく行っていた店だ
だから和真としては、そこで偶然 政実に会うのは
それほど驚く事でもなかった。
「…それで?それからいままで?」
「うん…ちょっと買い物して、お茶して…
でも個室で2人きりになったりしてないよ」
和真は柊生の心配を消すため、敢えて
笑いながら言った。
「デートみたいだな」
空かさず鼻で笑うように言われて
和真は言葉を失う。
「…政実君? βには見えないね?」
「…は?」
「今日、2人…見たよ…14時頃だったかな…」
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