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「熱 計って」 「…うん」 今度は素直に応じて体温を計る 「汗すごっ…タオル持ってくる」 タオルを取りに行ったついでに 普段持ち歩いている自分のピルケースも 持って行く。 「何度だった?」 「…8.5」 「マジ?朝は元気だったのに…」 言いながらクローゼットへ入り 柊生の着替えを持って戻る。 「起きられる?着替えよ」 柊生はノロノロと起き上がって 着ている物を脱ぎ始めた。 脱いだところで 和真がタオルで体を 軽く拭いて、新しい着替えを手渡した。 「寒いから早く着て」 そんな和真の言葉も無視して柊生は 和真のシャツのボタンに手をかける。 「風邪のくせに、なにしてんの」 和真が笑ってごまかそうとしても柊生は 表情を変えず、最後の一つまで開いて 部屋の明かりをつけた。 熱のせいで呼吸も荒く、朦朧とした表情で 和真を脱がして体を見つめて、いたる所にキスを 落とす。 身体中を撫でて、和真の後ろに指を入れても それだけで、進める事なく すぐ離れた。 ー ああ、オスの痕跡がないか 確認したいだけなのか… セックスがしたい訳じゃない 和真はそう気づいても不思議と嫌な気持ちには ならなかった。 バカな事だと思いつつも、αの習性だと思うと 可愛いとすら思える。 それで柊生の気が済むなら、好きなだけ 調べさせてあげようと思った。 他の雄の痕も、匂いも、どこかでそれを流した 安っぽいソープの香りだってしないでしょう? 柊生の目を薄く笑いながら見つめた。 「ごめん」 その目を見た柊生が手をとめる。 和真の上から降りて仰向けに倒れると 両手で顔を覆ってため息をついた。 「風邪悪化しそうだから服着よ」 和真は投げ出されていた服を手に取って 無理やり柊生の首にかける。 「自分で着るから、カズも着て」 「うん」 言われるまま服を着た。 「前に大崎さんにもらった解熱剤、余ってるけど 飲んどく?」 「ああ、飲む…ありがと…」 「食欲は?」 「全くない、胃にきてて…」 「じゃぁ 飲んだら寝よ」 柊生はコクリと頷いた。

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