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着替え終わり、横になった柊生に 布団をかけると、柊生の手が和真の手を ぎゅっと握ってきた。 ここに居ろという事だろうと思って 一緒に横になる。 「風邪移っちゃうかな…」 柊生がつぶやいた。 「移ってもいいよ。俺まだ無職だし」 笑って返す。 「ごめん」 「何のごめんよ。もういいから」 言いながら部屋の電気を消した。 「俺こそ ごめん…深く考えてなくて… 疑わせてごめんね」 柊生は何も言わなかったけど 握っていた手を強く握り返し、両手で包んだ。 ー もう怒ってないかな… ゆっくり眠れるかな 体調が悪い時に、気持ちまで落ちてるなんて最悪だ。 何も心配しないで眠ってほしい。 それからしばらくして、柊生がスースーと寝息を たて始めたのを確認してベッドを出た。 深夜 解熱剤で一度は下がっていた熱も 翌朝また上がり、柊生は大崎のところに電話して 早い時間にクリニックへむかった。 昼前には帰って来てインフルじゃなかった、と ホッとした顔を見せた。 「リンゴくらいなら食べれそう? 整腸作用があるんだって」 「うん、食べる」 少し顔色の良くなった柊生を見て 和真もホッとした。 「あー!今日 店予約してたんだ!」 「ええ!?まさかクリスマスイブだから?」 「…うん」 「特別な事はやめようって言ってたのに」 「プレゼントは無しでも、レストランくらい いいかなって…」 「キャンセルの連絡しなきゃね」 柊生はクッソーと苦い顔で店に連絡していた。 「こんな時に体調崩してごめん」 細かく切られたリンゴをシャリシャリ噛みしめながら 柊生がションボリとして言う。 「気にしなくて いいって。お休みになったおかげで 1日 一緒にいられるんだからいいじゃん」 和真は大きなままのリンゴを口に投げ込んで 頬をリスのように膨らませてモグモグした。 隣同士で座ったソファー。 和真はテレビのバラエティー番組を見て 笑っている。 「キスしたいな」 柊生がそう言うと、和真はリンゴを頬に入れたまま ん、と唇をつきだす。 「いや、さすがに風邪移るだろ」 柊生は思わず笑ってしまった。 「あ、良かった。やっと笑ってくれた」

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