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…
「凄い!ぴったりじゃん!」
「ふっふっふ 凄いだろ
手を繋げばサイズが分かるんだ」
「なんかナンパな特技だな~」
和真は指輪の着いた左手を天井に向けて見上げながら
毒をはく。
「一言多いな…はい、俺の番」
柊生も左手をつきだす。
「ハイハイ」
和真が何の躊躇いもなく柊生の薬指に指輪を
通した。
「え、なんか適当じゃん?」
「そんな事ないよ」
そう言って指輪をした指にチュッと音をたてて
キスをする。
「…それズルいな」
柊生は耳を赤くして手を引っ込めた。
「俺、指輪も初めてだよ」
和真がじっと柊生の目を見て言った。
「ありがとう」
柊生も和真を見つめ返して
心臓を落ち着かせようと息を吐いた。
「オモチャだよこれは」
「…どういう意味?」
「本物を渡せるまでの繋ぎな」
和真の顔が途端に真面目になる。
「和真に恋人になってほしいんだ
…… 結婚前提で」
部屋が静まりかえって
時間が止まったように感じた。
「パパはおしまい」
「……」
和真はじっと柊生を見つめて笑う。
「好きだよ」
見つめあい、少しの沈黙の後で
和真がうん、と頷いた。
「だからずっとここに居てほしいんだ
家なんて探さないで」
「…俺…1度ちゃんと自立しなきゃって…」
「仕事決まっただけで十分だろ」
「柊生の家族に会うとき
居候だって思われたくなかったんだ」
和真の言葉に柊生は驚いた。
ー 家族に会う事を考えてくれてたのか…
「いつかそんな日がきたらさ…
その時に堂々と会いたいんだ
きっとどこまで頑張っても杏菜さんが言ったように
柊生の家には釣り合わないけど
せめて自分くらい、自分を恥じないで
いたいと思ったんだ」
「そんな事 気にするなよ」
「するよ」
「俺の事だけ気にしろよ」
和真の目が驚いて大きくなった。
「…あ、いや、なんか言い方が変なキャラ入っちゃった
ちょっと待って、やり直し…
家の事なんて気にしないで、俺の言葉だけ
信じて ついてきてほしいって意味だよ?」
言い終わる前に和真がシャンパンを吹き出す。
「ちょっと、真面目な話ししてるのに
笑わせないで!」
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