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32.明けない夜はない
シャワーを浴びて、二人で深夜にケーキを食べた。
さっさとベッドで眠ればいいのに、二人でソファーで
イチャイチャしながら海外ドラマを見たりする。
和真はソファーの下であぐらをかいて座り
柊生はソファーの上に横になって、和真の肩を
抱くように腕を乗せて、テレビを見ていた。
柊生の腕が重くなり、ウトウトと睡魔に襲われている
事に気づいて、和真は声をかけた。
「柊生 風邪引くよ ベッド行けば?」
「うーん…カズは?」
「これ、もう少しで終わるから、見たら寝る」
「じゃぁオレも…」
ー いや、もう寝てるじゃん
ブランケットをかけて そのまま、柊生の腰を
抱き枕のようにして自分も横になる。
「柊生…前にさ、俺は私生児だって言ったでしょ」
「……う…ん、何?」
柊生は半分眠っていて、ほとんど意識がない。
そのくらいが、話す和真にはちょうどよかった。
「俺の母親は20で俺を産んだんだ
父親は死んだけど、すっごいお金持ちの
αだったって聞かされてたけど…
ホントはどうだか分からない
いい加減な人だったから、全部ウソかも」
柊生は目を閉じていて、返事をしなかった。
「母親は昼と夜の仕事をかけもちして
とりあえず、俺を捨てたりもしないで
育ててくれたけど、彼氏ができたら何日も
帰って来ない日も何度もあったし
貧乏生活だったし、俺… 心のドコかで…」
ゆっくり息を吐いて柊生の手を握った。
「…どこかでずっと…母親のこと軽蔑してた」
ー 何で この人は俺を産んだのかって…
「どういう いきさつで俺を妊娠したのか
聞いたことなんてなかったけど…
無理やりだったのか、勢いだったのか
……相手を信じていたのに裏切られたのか…
知らないけど…俺は絶対に母親のようには
ならないってずっと思ってた」
急に、背中に乗っていた柊生の右手に力がこもって
和真を上に引っ張り上げる。
「起きてた?」
「うん。ちゃんと聞いてる」
「うるさかった?」
「そんなわけないだろ、バカ。ちゃんと聞かせて」
「顔見て自分の事ちゃんと話すって、恥ずかしいよ
ほら、もう今恥ずかしくて何話してたか
分かんなくなっちゃった」
クスクス笑いながら和真が言った。
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