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「お母さんのようには ならないって心に誓った 和真少年の話しでしょ」 ー ホントにちゃんと聞いてたんだ。 「うん、そうそう和真少年の話し」 和真は柊生のテンションにあわせて 軽い口調で続けた。 「でも…柊生とバスルームで…あの時 俺、あっさり入れさせちゃって…」 「ごめんなさい」 「違う、違う。謝ってほしいんじゃなくてさ あの時もっと拒否する事はできたのに、結局 俺、しなかったじゃん? 気持ちよさに流されてさ… 軽蔑してた母親と、同じ事をしてるのかもって そう思ったら怖くて… あーあの人も、もしかしたらほんの少しの 迷いの中で、命なんて重いものを授かって しまったのかなって」 柊生が子供をあやすように、和真の肩をゆっくり ポンポン叩いた。 手のひらから伝わる優しさに背中を押してもらう。 「俺は 誰かのせいにしたくないの」 「…分かったよ」 「ピル飲んでもいいよ。大崎さんところで 受診すれば処方してもらえるよね」 「ピルはダメ」 「…何で?抑制剤と合わせて飲んでる人 結構いるよ」 「カズ今回の発情期 薬効かなかったじゃん。 普段は効いてたのに効かないって、ストレスとか 体調不良とか色んな要因があるって傑も言ってた。 これから新しい職場で、1から仕事を覚えて 回りにも気を使って… 次の発情期も普段より重いかもしれないって 俺今から 心配なんだ」 「…… 」 「その上 ピルなんて… ホルモンバランスメチャクチャな時に 飲んでほしくない!避妊は今までどうり!」 「…うん、りょうかい…」 「あと一応確認なんだけど…」 「うん」 「妊娠そのものが嫌、、なの?」 柊生の言葉から勢いが消えた。 「それが…最近…柊生に出会ってから変わったんだ」 「え…?」 ー 喜んでいい方?悪い方? 「今までは具体的にイメージしたりしたこと なかったんだ。だから嫌だとか以前に考えても いなかった…。 でも最近は… 柊生の子供を妊娠なんてしたら どんだけ誇らしいだろうって思っちゃって… だから余計にちゃんとしなきゃマズいって」 「か、かずっ!」

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