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「今から家に電話かけるよ」 翌日ゆっくり目覚めて、ブランチをして、 部屋の掃除をしたり、洗濯をしたり、のんびり 過ごしていたら、柊生がそう言って声を かけてきた。 和真はベランダで洗濯物を干していて あ、うん、と間抜けな返事をしてしまった。 柊生もベランダに出て来て ベンチに座る。 「誤解のないように先に言っとくけど… 家には まだカズの事話さないつもりだから」 「…うん」 「結婚を考えてる相手が別にいるなんてばれたら 大騒ぎになって、会わせろとか、最悪の場合 カズのこと、…アレコレ調べられたりして 嫌な思いさせるかもしれない」 「……」 「だから、今は まだカズの事は隠しておくけど それは先延ばしにして、うやむやにしようとか そんなつもりじゃ絶対にないからな!」 「そんなの分かってるよ」 和真は苦笑した。 「…めんどくさくてゴメン」 柊生は立ちあがって、和真の頬にキスして 頭を撫でると部屋に戻った。 久しぶりに実家に電話する。 用がある時はだいたい、それぞれの携帯へ 連絡するから家にかけることは ほとんどない。 数回呼び出したところで母親が出た。 「俺だけど…」 (…おれおれ詐欺なの?) 「…柊生です」 (分かってるわよ) 電話の向こうで母親が自分のギャグで笑っている。 「今日父さん達は?」 (お父さんはゴルフ、お祖父様は居るわよ) 「…じいちゃんは、怒ってる?」 (怒ってるし、心配してる。柊生に法に触れるような 趣味があるんじゃないかって) 真底面白いというように彼女は笑った。 「杏菜が言ってた事は冗談だよ」 (…あらそう) 「でも相性があわなかったのは間違いない 長く時間をかけたから分かった事だよ 今さらゴメン」 (あちらのお家、怒ってなかったわよ。 杏菜さんの言ってた事は信じてないみたいだった 娘の気まぐれだって… むしろこんな事になって申し訳ないって 謝られちゃった)

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