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政実の心配をよそに、カウンターの男達は
10時を過ぎた頃には店を出ていた。
心配の種が いなくなった事でホッとしたのか
政実はそれからグイグイ飲み始めて
ご機嫌になった。
「そろそろ、政実ん家に移動して
飲み直す?」
村山がそう言い出したのは11時頃だった。
これも和真たちのよくあるパターンだった。
「あ、じゃぁ俺はこれで帰るよ」
和真は携帯を見ながらいった。
「あれ?政実の家行かないの?」
「俺、迎え来るし」
「やらし~! 過保護な男だな~」
「何とでも言え」
会計を済ませて外に出ると、雨はまだパラパラと
降り続いていた。
「あれ?傘がない」
来るときに指してきた傘が、傘立てから消えていた。
半透明の白い傘。
似たようなビニ傘はよくあるから、間違えられたのか
わざと持っていかれたのか。
和真の傘だけがない。
「俺の持ってけば?」
村山が傘を差し出す。
「そうだな俺たち一緒に入っていけばいいし」
山田が自分の傘をさしながら言った。
ありがと、と手を出そうとした時
政実がそれを遮った。
「いいよ俺が駅まで送ってく
お前ら先に俺んち行ってて」
そう言って自分の家の鍵を渡した。
「え、いいよ、逆方向だし」
「いいって、ちょっと話しもあるし」
そう言われると、山田と村山は顔を見合わせて
気を効かすように、じゃぁ 行ってるわ、と歩き出す
「ネギ仕事頑張れよ~」
「おぉ さんきゅー」
二人が去っていくと、なんとなく気まずい
沈黙が押し寄せる。
Ωだと言っただけで2人の距離感が微妙になった。
以前だったら、ひとつの傘に入って歩く事ぐらい
何とも思わなかったのに。
「もっと早く言ってくれたらよかったのに」
政実が独り言のように呟いた。
Ωの話だと気づいた和真は、反論することもなく
うん、とだけ答える。
「そしたらもっと…助けられたのに」
「そんな助けてもらわなきゃならない
状況あったっけ?」
和真は笑いながら言った。
「夜、一人で帰したりしなかったし
ヒートの時に海に誘ったりしなかったよ」
「あぁ よく覚えてるね、そんな事
俺が絶対行かないって言って、ケンカになったよな
そうそう当たり、あの時ヒートだった。
薬飲んでれば平気だとは思いつつも、ヒートの
真っ最中に海パンになる勇気がなかったの」
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