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34.ワンダーウォール ※
悪あがきだと思いつつも、ストールを取って
バサバサとはたいて、小さく畳んだ。
意味があるかは分からないけど
なんとなくパンパンと体も(服を?)はたいた。
心を落ち着かせようと 息を吐き出してから
トイレの個室のドアを開けた。
「っ!!?」
足を踏み出して、すぐ
思わず ひっ、と声を上げそうなほど驚いた。
男が立っていた。
トイレの入り口付近、手洗い場の前
片方の肩だけ壁に寄りかかり
手には 手のひらサイズのサバイバルナイフ。
折り畳み式のそれを、開いたり閉じたりして
ニヤニヤした顔で玩んでいた。
ー コイツ、さっきの…
間違いない、居酒屋でこっちを見てた男の一人だ。
ー マズイな、嫌な予感しかしない
この様子…偶然とは思えないし…
とりあえず、知らないフリで手を洗った。
「さっきさ、居酒屋にいたよね」
ヘラヘラ笑いながら声をかけられる。
和真は声を出さずに、少し笑って首をかしげた。
下手に刺激しないほうがいい。
とりあえず外に出れば、まだそれなりに人通りはあるし
すぐに柊生も来るだろう。
「君ってβ?Ω?」
男が少し近づいてきて、手洗い場にすわる。
和真はまた、どちらともとれない表情で首を傾げた。
「ふぅん… まぁいいや
突っ込んで噛んでみれば分かる」
ー !?
今、なんて ?
和真の心拍数が一気に跳ね上がった。
ー コイツ何て言った ?
「急に青ざめちゃって クックッ…
やっぱりΩか、ラッキー」
男が醜い顔で笑った。
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