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…
「さっきの男…バカだな
送るなら改札まで送れよなぁ
そしたらこんな目にあわなかったのにな」
ー 政実の事を言ってる?
さっき見られてたのか
「タクシー乗ろうと思ってソコに立ってたらさ
見つけちゃった。人前であんま見せつけんなよ
ムラムラしちゃうじゃん」
男はどこまでもヘラヘラ緊張感がない。
手にちらつかせた凶器とのギャップが逆に
恐怖をあおる。
和真は全身が震えて変な汗が出てきた。
笑ってしまうほどガクガクする足で
なるべく男から距離をとって、出口をめざした。
「おい、なんだよ逃げるなよ」
男が和真の二の腕を掴んで、強い力で引き戻す。
「迎えが来るんですよ、もう外にいるかも」
脅すために事実を言った。
「へぇ、じゃあ急がなきゃな」
そう言って、さらにトイレの奥へ突き飛ばされた。
男は自分のズボンのベルトをカチャカチャと外して
ジッパーを下げる。
ー ヤバい
本当にイカれた奴だ
人が来るかもしれないって状況で…
トイレの個室にすら入ろうとしない。
人に見られることを恐れてない。
和真はそれまでの冷静さを失って、出口に向かって
走り出す。それも狭いトイレの壁にはばまれて
あっさり捕まった。
今度はさっきとは比べ物にならない力で、引き戻されて
壁に叩きつけられ、後ろを向かされる。
ナイフを持った手で頭を壁に押さえつけられ
もう一方の手は和真のズボンのベルトを
はずそうと、まさぐっている。
「まってっ!ちょっと待って!!」
顔をトイレのタイルの壁に擦りつけられたまま
声の限りに叫んだ。
「なんだよ時間稼ぎ?」
言いながら耳を舐められ全身に悪寒が走る。
「っ何でもするから…噛まないで!」
「…何でも…って?」
「……フェラするよ、俺、上手いんだって」
少し笑って言った。その気にさせるように。
ー 何でもいい。噛まれるくらいなら
死んだ方がましだ!
咥えてれば番にされる最悪の状況は
避けられる。
その間に誰か来てくれれば…。
柊生、柊生、気づいて!
ここだよ、俺はここにいる!!
男は心底 可笑しそうに笑って。和真の髪を掴んだまま
片手で下着ごとズボンを下げた。
「じゃあ、しゃぶれよ」
髪を掴んで、肩を押さえつけて、膝まずかされる。
猛ったモノを顔に押し付けられると、鼻をつく
雄の臭いがして、吐き気がした。
「早くしろ」
あきらめて、おずおずとそれに手を添えると。
自分の首もとで、ぶちぶちと何かが裂ける音がした。
男がナイフで和真の服の襟を引き裂いた音だった。
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