173 / 234

「さっきの男…バカだな 送るなら改札まで送れよなぁ そしたらこんな目にあわなかったのにな」 ー 政実の事を言ってる? さっき見られてたのか 「タクシー乗ろうと思ってソコに立ってたらさ 見つけちゃった。人前であんま見せつけんなよ ムラムラしちゃうじゃん」 男はどこまでもヘラヘラ緊張感がない。 手にちらつかせた凶器とのギャップが逆に 恐怖をあおる。 和真は全身が震えて変な汗が出てきた。 笑ってしまうほどガクガクする足で なるべく男から距離をとって、出口をめざした。 「おい、なんだよ逃げるなよ」 男が和真の二の腕を掴んで、強い力で引き戻す。 「迎えが来るんですよ、もう外にいるかも」 脅すために事実を言った。 「へぇ、じゃあ急がなきゃな」 そう言って、さらにトイレの奥へ突き飛ばされた。 男は自分のズボンのベルトをカチャカチャと外して ジッパーを下げる。 ー ヤバい 本当にイカれた奴だ 人が来るかもしれないって状況で… トイレの個室にすら入ろうとしない。 人に見られることを恐れてない。 和真はそれまでの冷静さを失って、出口に向かって 走り出す。それも狭いトイレの壁にはばまれて あっさり捕まった。 今度はさっきとは比べ物にならない力で、引き戻されて 壁に叩きつけられ、後ろを向かされる。 ナイフを持った手で頭を壁に押さえつけられ もう一方の手は和真のズボンのベルトを はずそうと、まさぐっている。 「まってっ!ちょっと待って!!」 顔をトイレのタイルの壁に擦りつけられたまま 声の限りに叫んだ。 「なんだよ時間稼ぎ?」 言いながら耳を舐められ全身に悪寒が走る。 「っ何でもするから…噛まないで!」 「…何でも…って?」 「……フェラするよ、俺、上手いんだって」 少し笑って言った。その気にさせるように。 ー 何でもいい。噛まれるくらいなら 死んだ方がましだ! 咥えてれば番にされる最悪の状況は 避けられる。 その間に誰か来てくれれば…。 柊生、柊生、気づいて! ここだよ、俺はここにいる!! 男は心底 可笑しそうに笑って。和真の髪を掴んだまま 片手で下着ごとズボンを下げた。 「じゃあ、しゃぶれよ」 髪を掴んで、肩を押さえつけて、膝まずかされる。 猛ったモノを顔に押し付けられると、鼻をつく 雄の臭いがして、吐き気がした。 「早くしろ」 あきらめて、おずおずとそれに手を添えると。 自分の首もとで、ぶちぶちと何かが裂ける音がした。 男がナイフで和真の服の襟を引き裂いた音だった。

ともだちにシェアしよう!