174 / 234

ロータリーに到着すると柊生は停められそうな 場所を探しながら、和真の姿を探した。 運がいいことに駅からかなり近い場所に停める事が できた。 ー まだトイレか? さすがに時間経ってるし コンビニでも行ったかな? 柊生は何かメッセージが届いてないか携帯を 確認する。 しゅう! 「ん?」 和真に呼ばれた気がして携帯から顔を上げて 返事までしてしまう。 辺りを見回しても、和真の姿は無かった。 ー 幻聴か …。 恋の病かな 自分で考えて笑ってしまう。 和真を飲み会に出している時間は長かった。 一度家に帰って、溜まっている仕事をして時間を つぶしていたが、こんな時の仕事はあっという間に 終わってしまう。 後は何をしていてもソワソワ、時計ばかり眺めて 過ごした。 そりゃ幻聴も聞こえる。 帰りは11時半から12時の間になると言われて いたけれど、きっと12時近くになるだろうと思って いたのに。 時間を守って帰ってきてくれるのが嬉しい。 柊生は携帯を持ったまま車の外に出た。 雨は傘がなくても歩けるくらい小雨になっている。 辺りを見回しながら和真に電話かけようとすると サラリーマン風の男性が、携帯を見ながら 駅の外付けのトイレへ入って行くのが目に入って 和真が寄ったトイレはあそこだろうか?と眺める。 すると今入ったばかりの男性が、慌てて転がる様に トイレから飛び出してきた。 出て来たものの、挙動不審にトイレの回りを 行ったり来たりして、腰を引きながら中の様子を もう一度確認しようと覗きこんでいる。 柊生はそれを見ながら和真に電話をかけた。 どれだけコールしても出なかった。 なぜか胸の奥の方がムズムズしてトイレの男性から 目が離せない。 柊生は車を置いてそちらの方へ歩き出した。 男性はずっとウロウロ歩き回り、トイレを気にしながら どこかへ電話をかけていた。 「どうしました?」 ほとんど口パクで男性に聞くと、柊生に声をかけられ 一瞬だけ ホッとした顔を見せる。 「中で、多分Ωの子が乱暴されてるんだ! 今警察に連絡を…」 その声と同時に中から男の怒鳴り声が聞こえた。 「おとなしくしろ!刺すぞ!」 柊生の心臓がゆっくりと速くなっていく。 フラフラと中へ足を向けると、後ろのサラリーマンが 「刃物を持ってるから!気を付けて!」 と 叫んだ。

ともだちにシェアしよう!