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「俺と握手してみる?」 「?」 返事をする前に傑が和真の手を握った。 「何か感じる?嫌悪感とか」 「……別に…ただドキドキするだけ」 そう和真が言うと、傑がフッと笑った。 「少なくとも、本当に番は成立してないね 俺も一応αだし…これだけ触れられて平気なら… 良かった、安心した」 ー 柊生君に触られても大丈夫そうだったから それほど心配してなかったけど ひょっとして意識がなかったからかと思った。 「って事は、噛まれた後も大丈夫そうだよね…」 言いながら手を離してパイプ椅子に座った。 「レイプキット進められたって?」 和真の落ち着いている様子を見て、傑は思いきって 聞いてみた。 「俺、未遂だから意味ないと思うんだ」 「…うん、それなりに辛い検査だしね でも今しかできないって事はちゃんと理解 しとかないと……後悔しない?」 「……俺はしないと思う。もう忘れる。忘れたい 番になってないなら、それだけでいい」 「潔白も証明できるけどね」 「…潔白…」 「事実は本人たちにしか分からないけど 検査はそれを回りの人に見せてくれるから いいことも悪いことも」 「……」 柊生が病院に戻ったのは1時間以上経ってからだった。 傑が真っ暗な待合室の自販機で飲み物を買っていると 警察官2人と共に戻ってきた。 「ありがとう、カズ起きた?」 「起きてるよ、お疲れ」 「どんな感じ?」 「落ち着いてるよ」 そう言うと柊生はホッとした顔を見せた。 処置室のカーテンを開けると、戻ってきた柊生を 見つけて、こちらもホッとした顔を見せた。 「お待たせ、もうすぐ帰れるよ」 回りの目もはばからず、すぐに手を握った。 「…警察の人が もう一度話したいって」 同行してきた警官が軽く会釈をして入ってくる。 和真は起き上がって、一緒に頭を下げた。 「事件の状況は先ほどお話ししていただいた かたちで間違いないですか?」 「はい」 「証拠を残すのは今しかないです。 気持ちは変わりませんか?」 「…変わりません お話しした以上の事実はないので… ………でも、柊生が心配なら…」 握ってた手に力を込めて、柊生を見た。 「…俺?」 「起訴してもいいし、検査受けてもいい」 警官がチラリと柊生を見た。 「柊生が決めていい。柊生が納得できるなら 俺どっちでも平気」

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