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36.未だ見ぬ夢 ※

帰りの車内は静かだった。 お互い何も話さず。 和真はいつものように窓側に頭を倒して 目を閉じてた。 柊生が時々、和真の様子を窺って 髪を撫でたり、手を握ったりすると 薄く笑うので、眠ってはいないようだった。 話したい事はいっぱいあった。 でも今は何も考えない、ただ穏やかな時間が 欲しかった。 2人ともそう感じている気がした。 帰ってすぐにシャワーを浴びた。柊生は和真が シャワーを使っている間に、和真が身につけて いた衣類も自分が身に付けていた衣類もゴミ袋に 投げ入れて、そのままゴミ置き場へ捨てに行った。 すっかり綺麗にして、何もかも流して ふたりがベッドに入ったのは うっすら空も白んでくる4時頃だった。 「…柊生の匂い…」 ベッドで抱きあうと和真がこぼした。 「カズの匂い…って犬か」 二人で言い合って笑った。 「……俺今日仕事納めで出勤しなきゃだった」 「ごめんね、ほとんど眠れないね」 「バカ、そうじゃなくて… 置いてくのが心配…1人で平気?」 「平気に決まってるでしょ。 子供じゃないんだから…」 「………仮病で休もうかな」 「こら、人の話し聞いてんの? ちゃんと仕事行きなさい」 「水野さんも今年最後の大掃除頼んでるけど どうする?」 「来てもらってよ。俺のせいでキミちゃんの 仕事の都合乱したくないし… あ、でもこんなケガした状態で会ったら 柊生が実はとんでもないDV男なのかもって 思われちゃうかもね」 言いながらクスクス笑った。 「………確かに」 ー 治ったと思ったらまた怪我で 俺は水野さんとは仕事の話しくらいしか したこともない…。人間性を疑われても おかしくはない… 「俺、体調悪くて寝てるって言っといて 音とか全然気にしないから 実際…午前中爆睡だと思う」 言いながらアクビをするので、 柊生もつられてアクビした。 「……おやすみ…」 珍しく和真が仰向けで寝ようと寝返りをうつ。 左手がモゾモゾとうごいて、柊生の手のひらを 見つけるとぎゅっと握った。 ー 首が痛くて横向きがキツいのか… 柊生も ぎゅっと握り返した。

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