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男の荒い息づかいを耳元に感じた気がして 驚いて目が覚めた。 全身汗だくで、身体中痛くて、自分が 眠っていたのか、起きていたのかも分からない ずっと、嫌な夢を見ていた気がする…。 横を見ると柊生が死んだように静かに眠っていて その姿を見てホッとした。 ー 良かったこれは夢じゃない 柊生の腕の中に 俺はちゃんと帰ってこれたんだ。 時計を見るともうすぐ6時だった。 ー 痛み止めが切れてきたのかも… 首の痛みは、じんじんと脈打つように響いて 頭や肩まで伝わり、気分は最悪だ。 ー クソ! 力任せに噛みやがって 殺す気か! 和真は柊生を起こさないように、そっとベッドを出て 汗で不快なスウェットを着替えた。 脱いだものを洗濯機に投げ入れて お茶を飲むためにキッチンへむかう。 お茶を飲みながら痛み止めをもう1度飲もうか 考えていると、柊生が起きてきた。 「どうした?大丈夫?」 「ごめん、おこした? 汗かいて目が覚めちゃっただけ」 「どうせ、そろそろ起きる時間だし平気…」 柊生も横に立って一緒にお茶を飲んだ。 ゴクゴクと喉仏が上下するのを眺めて 和真は柊生の胸にすり寄った。 「…エッチしたい」 「ど、どうした?」 「ぎゅってして」 柊生は言われるまま、和真の背中に手を回して 強く抱いた。 「…したい…激しいやつ…」 痛みが吹っ飛ぶくらいの… 「ッフフ… そうだね。 したいね 仕事休んでしちゃおうか?」 「……ダメ… ちゃんと仕事行って」 そう言うと和真は柊生から離れて ふてくされた様な顔で、リンゴを出して 果物ナイフを手に取った。 「俺がやるから、座ってて」 柊生が言うと、少し考えて じゃぁお願い、と言ってナイフを置いた。 「柊生は?体 大丈夫?」 「俺?…まぁ寝不足だけど大丈夫だよ」 「そ……大崎さんが言ってたんだ。柊生がフェロモン 出すぎて体キツいんじゃないかって、落ち着いた頃 体ダルくなるんじゃないかって…」 「あぁ、じゃぁこれ、寝不足じゃなくてそれか ダルさは、まぁそれなりに…」 「……ごめんね、色々」 「オイ、謝るな この件で謝るの禁止な お前は悪くないんだから」 柊生が睨むように和真を見て言った。 「…うん」 和真は、しかられたように少しシュンとした。

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