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…
「じゃぁ 行ってくる。早めに帰るから
ちゃんと寝とけよ」
玄関で靴を履いた柊生が振り返って言う。
「うん、気を付けてね」
いつものようにハグして、キスをする。
当たり前にできる幸せ。
和真は目の奥が熱くなって、うっかり涙が
溢れそうになった。
ー ここで泣いたりしたら柊生が勘違いして
やっぱり仕事行かないとか言いそうだ
どうにかこらえて笑った。
「チーズタルト帰りに買ってきて」
柊生は笑って 了解、と言って出ていった。
・
・
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ー キミちゃん来たんだ…。
9時半頃 物音で目が覚めた。
ー 今年最後か…会いたかったけど
こんな怪我で会うのはやっぱり気が重い
首の包帯は服でどうにか隠せても、額の痣は
隠せない。
部屋に籠っている理由は柊生が上手いこと
言ってるハズだし
今日はおとなしくしていよう。
そう思っているうちに、またウトウトと眠気に
襲われた。
昼過ぎに目覚めると、家は静まり帰っていた。
外は今日も相変わらず、雨が降ったり止んだりの
どんより空だ。
和真はしばらくベッドで窓の外を眺めてボーっと
していた。
朝、柊生と一緒にリンゴを少し食べただけだったが
空腹感はなかった。
喉の乾きを覚えてキッチンに行くと
テーブルに置き手紙があった。
“和真君インフルエンザ大丈夫ですか?
会えなくて残念でしたが、よく眠っている
ようだったので声をかけずに帰ります。
シチュー作っておくので、食べられそうなら
食べて下さい。お大事に。
来年もよろしくお願いします ”
ー 柊生、俺のことインフルって
言ったのか…
置き手紙に胸の奥がホッコリ温かくなったけど
残念ながら食欲は湧いてこない。水分だけとって
テレビをつけてみても、ちっとも内容が入って
こなかった。
手持ちぶさたになった和真は、また寝室に戻った。
柊生の布団にくるまれていると落ち着く。
抱きしめられてるみたいだ。
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