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…
心地よいダルさの中二人でシャワーを浴びた。
和真を座らせて、包帯を濡らさないように
柊生が優しく洗う。
和真は笑みを浮かべたまま大人しく柊生の
されるがままになっていた。
ー 良かった体には傷ひとつない。
あの男がナイフをちらつかせていたことを
思い出すと背筋が寒くなる。
大人と子供ほどの対格差のある和真相手に
刃物を持ち出すなんて…。
所詮アイツは小物だ。
ナイフはただの脅しの道具にすぎない。
きっと本気で刺すような度胸なんてない。
でも、和真がパニックになって揉み合いになったり
していたら、間違って傷を負ったり、下手したら命に
関わるような大ケガをしていた可能性だってある。
ー そんな事にならなくて良かった。
服を引き裂かれた時は、どんな気持ち
だっただろう…
柊生に体を洗ってもらう間に、指で輪っかを作り
フッと息を吹きかけてシャボン玉にして遊ぶ。
そんな和真を見つめて胸が苦しくなる。
ー 首の傷は残るだろう…
目眩がしてくるほど腹立たしい。
ちょっとくらい汚い手を使っても
あの男をこの世から抹殺してやりたい。
「寒いから出よ!」
不意に和真が声をかけてきて、柊生は我に帰った。
和真は、ゴメンと謝る柊生の横をすり抜けて
さっさと出ていってしまった。
後を追うように柊生が出て来ると、和真はもう
上の服を着ていた。
頭からタオルを被って、うつむいたまま
髪を拭いている。
無言で手を添えて、柊生がそれを手伝う。
柊生は和真の世話をするのが好きだった。
いつもは和真が嫌がるので、こんな時には
怪我を口実にして、ここぞとばかりに
あれこれ手を出す。
「…何 笑ってるの?」
和真の髪をドライヤーで乾かす柊生が
ずっとニヤニヤ笑っていて、それを鏡越しに見ていた
和真が口を尖らせるようにして聞いた。
「…いや、ゴメ…あれだな…って
痛いからエッチしようって
なかなかクレイジーな誘い方だったなって…」
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