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「…もう 忘れて」 和真が顔を手で覆って、うなだれる。 「最強に可愛かったな~ フフ」 「もう、いい…しつこい」 顔を赤くした和真が柊生を押し退けて 洗面所を出ていく。 キッチンに立って、2人分のお茶を入れようとする 和真を、柊生がリビングの方に座るように促した。 「どう?何か食べられそう?」 「うん、なんかお腹すいてきたかも…」 「じゃぁ包帯 変えたら食べよう」 「え」 ソファーに座った和真が驚いたように柊生を見た。 「カーゼ変えてないでしょ? 俺やってあげる」 「いい、いい! ご飯の後で自分でやるから」 「何で? 絶対自分だけじゃ大変だって」 「いいよ本当に!傷口なんて 気持ち悪いでしょ?」 その言葉を聞いて柊生がため息を吐いた。 二人分のコップを持ってきて、和真の隣に座る。 「気持ち悪くなんてない。1人でさせてるって 思う方が辛い。手伝わせて」 おそらく怒らないように、柊生なりに感情を 押さえているのだろう。 弱っている和真を責めないように…。 でも絶対に譲らないと、目が言っている。 遠慮されたり距離を置かれたり 柊生はそういう事を最も嫌った。 いつもだったらすっかり戦闘態勢に突入だ。 それを知っている和真はあきらめて 分かった お願い、と返した。 ガーゼを取るとすぐに柊生が眉を寄せて 顔を歪めた。 「めちゃくちゃ痛そうっ」 「うん、痛いよ……」 和真は目を ぎゅっと閉じて体を強張らせる。 「……かわいそう…」 独り言のように言いながら、消毒して薬を塗り 新しいガーゼで閉じる。 「はい、オッケー… 痛かったね」 包帯に苦戦しながらも、手当てを終えて 柊生が和真の頭をなでた。 「ありがとう」 和真が目を開けて笑うと 柊生が頬にキスをした。 「頑張ったね」 そう言って立ち上がろうとする柊生の手を 引っ張って、ソファーに座らせる。 「もう一回して」 和真が目を閉じて唇をつきだしてねだった。

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