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柊生は和真の頬を両手で包んで 今度は唇にキスした。 「 … もういっかい」 和真がヒソヒソ声で、またねだるので もう一度口を重ねて、やんわりと舌を入れる。 和真は待っていたようにそれをキュッと吸った。 「あー ダメおしまい! こんなことしてると また勃っちゃう」 柊生がごまかすように笑って顔を離す。 柊生の両手で頬を挟まれたまま、和真がクスクス 笑った。 「柊生の唇が好きなんだ」 そう言いながら親指で柊生の唇をなぞる。 ふっくらした唇。 じっと唇を眺めながら こぼした。 「キスできて良かった…」 もう一度 柊生がゆっくり唇を合わせて 和真の唇を柔らかく噛むと 腰が痺れるような感覚が走った。 「怪我が治って、落ち着いたら 番になろうか」 「………… え ?」 「すぐじゃなくていいよ。でも考えといて」 柊生の言葉がどこか遠くから聞こえるみたいに 和真の頭の中で何度も響く。 ー 柊生と俺が? 照れたような顔で柊生が立ち上がって キッチンへ向かう。 番になったら もう抑制剤もいらない。 フェロモンのせいで誰かを惑わす事もなくなる。 柊生だけがそれを受け止めて 柊生も和真のフェロモンだけを感じるようになる。 そんな日が本当に来るの? その先には幸せしかないように思えた。 想像もできないけど… 柊生となら 柊生がいてくれるなら …。 他に誰も要らないと言える。 きっと。 心は嬉しさと期待で高鳴っている。 なのに…。 ー 手が冷たい…。 なんだか眩しい。 「あ、そういえば年末どうす…」 キッチンでシチューを暖めていた柊生が 和真を見て、驚いて動きを止めた。 和真がソファーで口を押さえて前屈みになっていた。 「カズ!? どうした?」 和真は答える事ができずに 前屈みのままフラフラ立ち上がって あわててトイレへ向かった。 「気分悪い?吐く?」 動転しながら柊生が追ってきて、和真の背中を 擦った。 ー どうしたんだろう…俺…。 柊生の声も 触れられている感覚も ずっと遠い ゆっくり意識が遠退いて行く。

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