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37.羽根

「お邪魔します」 それから1時間ほど経って 傑が駆けつけてくれた。 「本当にごめん」 「いいよ、俺 休んでたし 今度奢れよ」 傑はいつものように穏やかな口調で話して 柊生の背中をポンポンと叩いた。 「…何でも奢る」 寝室に入り、明かりをつけると 眠っていた和真がピクッと反応して 眉間にシワを作った。 「和真くん、分かる?大崎です。 ちょっと障るよ」 細く目を開けた和真がボーッとした顔で とりあえずうなずいた。 「…柊生は?」 「ここにいるよ」 部屋の入り口で邪魔をしないように 立っていた柊生が駆け寄った。 「…俺、どうしたんだっけ?」 「吐いたんだよ。そのまま意識が混濁して 心配だから傑に来てもらった」 「……ぁぁ…そっか。すみません」 傑はいつもの優しい顔で笑って首を振った。 「手を伸ばせる?両手」 和真はノロノロと、 でも、しっかりと傑の指示に従っていた。 一通り傑が診察をして、うん大丈夫そうだね。 と笑って最後に和真の頭を撫でた。 和真は それに笑って返した。 「え、何で今撫でた?」 柊生が真顔でつっこむ。 「え? 何でだろ」 傑は自分の行動を自分に訊ねる。 「要らないよね、最後の」 「あれ?いらなかった?なんか流れで…つい」 二人の会話を和真がクスクス笑って見守った。 「じゃぁ リビングでちょっと話してるから カズはまだ寝てな?」 柊生がそう言うと、和真は黙って頷いて また うとうと目を閉じた。 電気を消して 和真だけ寝室に残して部屋を出る。 「貧血だけど、大丈夫だよ。 やっぱり心理的なものじゃない? 昨日の今日だし」 「…うん…そうかとは思ったんだけど それまで 落ち着いてたから… 急で ビックリしてさ…」 柊生はキッチンでコーヒーを入れながら話す。 「柊生君が、何か言ったりやったり したんじゃない?」 「………」 「柊生君が、何か言ったりやったり したんじゃない?」 「いや、聞こえてるけど…」

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