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「怖いな。心当たりがありそうな顔するなよ」 コーヒーをテーブルに置いて 傑の目の前に座った。 「…まぁ やったけど…」 「……何を…?」 「やったって言ったら…アレじゃない?」 傑がしらけた顔で柊生を見た。 「でも、それはカズが… 多分不安だったんだよ やってみるまで…だから…」 「それで?結果的に具合悪くなったんだ?」 「いや、その時は別に…変わった事もなく」 「…?」 「あとは…あれかなぁ…」 「どんだけ心当たりあるんだよ」 傑が呆れたように笑った。 「気分が悪くなる直前に話してたんだ…。 落ち着いたら……番になろうかって 別に返事も求めてないし、軽い感じで カズもそんなに気にしてなかったと思うけど…」 傑が驚いた顔で柊生を見た。 「バカだな」 「ひどい…」 「誰がだよ。 未遂でも レイプされそうになって 噛まれたばっかりのΩに なんて事言ってんの」 「カズを安心させたかったんだ。番になれば もうあんな怖い思いしなくていい」 「安心したいのは柊生君でしょ」 それまでのじゃれあいじゃない。 傑が柊生を蔑むように見て言った。 「は?」 「彼を自分の檻に囲って 守った気になりたいだけでしょ」 「…お前には関係ない」 柊生も傑をにらみ返した。 「…今のあの子にそんな話しするなんて どうかしてるよ。 答えがイエスでもノーでも それは正常な思考じゃないんだよ。 襲われた恐怖心から生まれた依存心か その逆で、その行為自体に恐怖心を抱いてるか 今の彼に冷静に考える余裕なんてないんだ」 「分かってるよ!でも耐えられないんだ! 助けるのが、あと数分おそかったら… 今アイツはここに… …ここに、戻れなかったかもしれない… 考えただけで、震えがきて…」 言った通り柊生は震えていた。 肘を付いて顔を覆って。 震えを押さえようとしている。 「……ゴメン…柊生君 言い過ぎたね …」 柊生も被害者の一人だと忘れていた。 友人も、いつもの冷静な彼ではないんだ。 「柊生君 大丈夫だよ… もう彼は大丈夫。 柊生君が助けたんだ。 とりあえず焦らないで… いつもの日常を取り戻そう」

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