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「勝手にそんな事、彼に伝えてさ… 隠しておきたかったかなって」 「大将も政実もあの男が俺に目をつけてた事 気づいてたから、その状況じゃ隠すのは無理だよ 柊生もそう思って話したんじゃないの? ……どっちにしても政実には、隠したりする つもりもなかったし」 「……なんかそれはそれで妬けるな」 「バカ」 しばらく天井を眺めていた和真が、くるっと 柊生の方を見た。 「政実、変なこと言ってなかった?」 「ん~ 特に何も…カズを大切にしろって」 「マジ? 」 「うん。ちょっとウザいけど いい子そうだね」 「…ップ、うん、そう アイツちょっとウザいんだ…」 和真が目を細めて笑った。 ー 何だ、その嬉しそうな顔。初めて見た。 まだ知らない顔があったんだ。 それでも弱っている和真が笑ってくれるのは 嬉しい。 「他の男の話でそんな顔しないで」 柊生がわき腹をくすぐった。 「あ、ちょっちょっ、やめて」 「ずっと気になってたんだけど 本当に二人はただの友達?何にもなかった?」 「…何にもなかったよ」 「本当?何かあったなら 今のうちに教えといて、今ならまだ平気だから」 「疑り深いなぁ、本当だって! ただ距離感が近かっただけで、何にもないよ」 「そう?じゃぁ信じるけど…」 「うん、本当に、何も…なかったよ なぁんにもね…」 和真はまた天井を眺めながら笑っていた。 少し寂しそうにも見える横顔だった。

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