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38.告白 ※

「助けて、助けて!柊生!」 突然 名前を呼ばれて飛び起きた。 そこはなぜか運転席で、思考がまとまらないまま 辺りを見回す。 和真を迎えに来た駅のロータリーだった。 早く着きすぎて、うたた寝をしてたのか…。 ー 今の声、和真? 思わず駅のトイレを見る。 和真が乱暴される夢を見てた。 柊生は動悸を感じながら車を降りて トイレへ向かった。 トイレの入り口に立つと、奥からうめき声が 聞こえてくる。 ー ああ … 夢と同じだ。 いや、どっちが夢? 震える足で中に入ると、熊のように大きな男が 裸の和真を壁に押し付けて襲っていた。 「カズ!!」 叫んで駆け寄ろうと足に力を入れて動かしても スローモーションのようにゆっくりしか 動けない。 ー 何でだ?すぐそこなのに!! 熊のように大きな男は激しく腰を打ち付けて 和真の口から苦痛とも快感ともとれる声が 漏れ続けている。 男はガッチリと和真の首に噛みついていて 溢れ出た和真の血が、走る柊生の足元まで流れて 届いて、その血で滑った。 和真が顔だけこちらを見て泣いている。 ー 助けられなかった 助けられなかった 助けられなかった 「柊生…」 「カズ、ごめん……ごめん…」 「柊生!」 はっきりした声と、頬を軽く叩かれる刺激を 感じて目を開けた。 見慣れた天井と 心配そうに覗きこむ和真が見えた。 「夢見た?めっちゃ名前呼ばれたよ ……ビックリした」 「 夢…?」 和真が両手で柊生の顔を拭った。 「……泣いてるし」 少し笑った和真がそっと横になって 柊生の胸を枕がわりに、ぎゅっと抱きついた。 「大丈夫。ここにいるよ」 そう言って柊生の肩を小さく擦った。 和真の心地よい重みと暖かさを感じて ホッと息を吐く。 ー 情けない…肩を抱いて安心させてやらなきゃ いけないのは、俺の方なのに…。 「…7時か…」 「うん、お腹すいた。 キミちゃんのシチュー食べようかな」 「お、食欲出てきたか」 「うん、今日は お天気も良さそうだね」

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