206 / 234
…
家に帰って激しく求め合って
お互い空になるまでやった。
玄関で、ベッドで、浴室で…。
やりたいだけやって、全て吐き出した。
二人でグッタリとベッドに倒れこんで
気持ちよい怠さの中で目を閉じる。
「よく眠れそう…」
やっと聞こえるくらいの小さな声で
和真が言った。
自分に言ったのか、柊生に言ったのかも
分からなかった。
ー そうか、今日妙に元気だったのは
やっぱり空元気だったんだ。
悪夢を忘れるように。
嫌な夢を見ないように。
普段と変わらない日常のふりをして。
楽しそうに振る舞って。
「うん…ゆっくり眠ろう…」
和真の柔らかい頬に口づけして
手を握って眠った。
・
・
深夜目を覚ますと
隣で寝ていたはずの和真の姿がない。
柊生はハッとして上半身を起こし
トイレにでも行ったのかと、部屋の外の
様子に耳をそばだてる。
「カズ…?」
何の物音もしないので、トイレではないと思い
思わず暗闇の中で呼んでしまう。
少し間が空いてから、ハイハイ、と声がして
バルコニーから和真が顔を見せた。
思ってもみないところから和真が戻ってきた事に
驚く。
「寒いのに、そんな所で何してたの?」
和真は大きめのブランケットを
体に巻き付けていたけど
中は薄着のままだ。
ブランケットを、ばっと投げ捨てて
柊生のベットに飛び込んで来る。
「ッギャ!冷たっ!!」
「ゴメン!…あー寒かった!」
和真の体が氷ように冷たく冷えきっていて
柊生は暖めるように羽毛でくるんで
体を密着させて擦った。
「…フフ 柊生 超あったかい」
「おまえは超冷たいよ、何してんのバカ」
「目が覚めちゃって…月が綺麗で見てたんだ
今日満月みたい。まん丸だった」
和真が満足そうに、そう話すので、柊生の心配も
消えていく。
「急に居なくならないで
ビックリするから」
「うん、ゴメンね」
同じ体温になるまで、柊生は和真を擦り続けた。
ともだちにシェアしよう!