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…
宿には3時過ぎに着いた。
直接 部屋でチェックインを済ませて
仲居がいなくなると、和真はドタバタと
和モダンな内装の部屋を駆け回った。
2階の寝室、リビング、小さな和室や
部屋の延長のようなテラス
石畳の露天風呂。
温泉の温度を確認するように触れてから
脇におかれた桧のベンチに座る。
それから雪の残った庭園をポカンと眺めた。
「なにこれ?
もう家じゃん!」
「だね」
一緒に庭を眺めながら隣に座る
宿の敷地は広く、よく手入れされた
広い雑木の庭を持っていて
渓流沿いにそれぞれ独立した、はなれのような
個室が点在している。
部屋には室内と露天の2つの温泉があり
どちらの温泉からも渓流が眺められた。
2人の部屋は1番奥まった所にあって
まるで隠れ家のようだった。
「これはヤバイね、柊生…。
相当高いね…」
「こら、お金の話しは よしさい
高いよ」
和真はカラカラ笑って、またすぐにボーっと
景色を眺めた。
「入る?」
柊生が聞くと首を振る。
「早いでしょ。
お庭、お散歩しようよ!」
「えー…イチャイチャしたい~」
柊生が子供のように和真に抱きついて甘えた。
「あ、そうか疲れてるよね
いっぱい運転したもんね
ちょっと休もう、ごろんしよう」
そんな事ないけど…と、柊生が言う前に、
和真が柊生の両手を引っ張って立ち上がった。
引っ張られる手を、逆に引っ張り引き寄せて
和真の腰を抱いて口づける。
何も抵抗なくそれを受け入れて、和真は
柊生の首に腕を巻きつけた。
「…川の音きれいだね
森の中にいるみたい」
和真が頬をくっつけたまま呟いた。
「そうだな、ここでやったら
森の中でやってる気分になるな」
「……… 柊生、下品…」
和真は目を細めて、ガッカリしたように
柊生を見つめてから、体を離して
一人でさっさと部屋に戻ってしまう。
「ま、待って冗談だよ?」
柊生は慌ててそれを追いかけた。
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