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夕食はホテルの中の鉄板焼レストランで食べた。 部屋で懐石を楽しむ事もできたが 和真が緊張するから嫌だ、と言うので フォーマルになりすぎない、適度に贅沢な店の チョイスを和真はよろこんだ。 柔らかい熟成肉を、溶けそうな顔で噛みしめる 和真が可愛くて、あれもこれも、どんどん 食べさせたくなる。 ー 俺は親鳥か…。 非現実的な世界に舞い上がっているせいか 和真は普段よりよく食べて、良く飲んだ。 ワインがすすんで、これ以上はまた爆睡コースだと 判断して、柊生は途中でアルコールを止めた。 「部屋でまた飲めばいいよ。 これから温泉入るのに、飲みすぎたら 危ないから」 そう言うと、そうだね、と素直に従って 飲むのをやめた。 部屋まで帰る道では、思った通り 柊生が逢いたかった あまえんぼモードの和真だった。 「寒いね」 眉を寄せて顔を強張らせて、柊生の手を握って 頭を柊生の肩にもたれかける様にして ピッタリくっついて歩いた。 辺りは真っ暗で、派手な街灯はほとんどない。 小路を縁取るように、ポツポツと明かりが 灯っていて、それだけを頼りに歩いた。 ホテルの辺りはそれなりに人がいたものの こちら側は、この時間になると、離れに 宿泊している客くらいしか来ないのだろう 部屋まで、ほとんど人とすれ違うことは 無かった。 何度も人目を忍んでキスしながら歩き 部屋に着く頃には、すっかり盛り上がって 我慢できなくなっていた。 二人を隔てる厚いコートやマフラーを バサバサ脱がして、ベッドにもなりそうな 広めのソファーに倒れこむ。 「おん…せんは…?」 和真が脱がされながら小さく聞いてくる。 「無理。一回しよう」 「…アッ!」 いきなりズボンに手を突っ込まれて 和真が小さく悲鳴を上げる。 柊生は思わず笑った。 「手…冷たかった?」 和真は文句を言いたげな顔で頷いた。 「フッ ごめんごめん でもこっちが熱すぎるんじゃないの?」 下着の中で中心を握って上下する。 「やっ…あ…あっ」 和真は体を丸めるようにして、全身を震わせた。 ー やっぱりいつもより 感じやすい… でも自分もあっという間に達しそうな予感がする。 柊生は無言で立ち上がると、タオルとゴムを持って 戻った。 自分の服を脱ぎながら和真を見ると 和真が火照った顔で柊生を見て笑っていた。

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