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41.Yes I do…

「明日はもう東京かぁ…」 和真が桧風呂に浸かって呟く。 「満喫した?」 柊生は正面に座って一緒に浸かり 和真の表情を窺う。 普段と変わらず元気そうな和真を見れた事が 嬉しくて、結局、色々引っ張りまわしてしまった。 実は柊生に気を使って、元気を装っていたのかも しれない…。 「うん満喫した。俺、都会に疲れてたのかな? なんかすっげー癒されちゃった」 和真が目を細くしてふにゃっと笑う。 「そっか、なら来て良かった…」 「柊生…ありがと」 「…うん」 「俺、少しでも柊生に何か返せるように… 仕事頑張るよ!今はただのお荷物だから…」 「……あんまり しっかりしないでほしいな…」 「なんだそれ」 吹き出したように笑う和真の腕を柊生が引っ張った。 「もっと頼って。もっと我が儘言って 俺にだけね」 自分の膝の上に乗せて後ろから抱く。 「やめて」 和真の中心に手を伸ばすと、和真が体をよじって 向きをかえようとする。 「…怖い?」 和真は少し考えるように固まって、うん、と 頷いた。 事件の後から背中越しに性的な行動に出ると 体を固くして、あわてて向きを変えようとする。 でも、怖いからやめて、とは言わない。 トイレと一緒だ。 「俺が…怖い?」 和真は首を振ったけれど、腕の力を緩めると すぐに体を滑らせて向きを変えた。 「怖いって言っていいんだよ カズが本当に嫌なこと絶対しない」 「分かってるよ」 「本当に分かってるかな~」 和真を握る手をゆっくり上下に動かすと バシャバシャ音をたてて暴れ出した。 「お湯汚すからやめろ!」 柊生が笑って手を離すと、和真は真っ赤な顔を 見られないように、1人で文句を言いながら せかせかと風呂を出ていった。 髪を乾かして、上着を羽織る前に柊生が 首の傷に薬を塗って絆創膏を貼ってくれる。 「治ってきたね」 「うん。もうほとんど傷みもない」 「やっぱり若いからかなぁ、俺より怪我の治りが 早い気がする…」 「はは、発言がおっさんだね」 「本当におっさんにならないように頑張るよ!」 言いながら笑う柊生を和真がじっと見つめた。 「頑張らなくていいよ 早く、その辺によくいる、だっさい、くっさい おじさんになっちゃえばいいよ」 「なぜ…ヒドイ…」 「だって、それ以上かっこよくなって モテたら困るでしょ」

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