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…
Ωの自衛の為に作られたチョーカー。
刃物などは通さない、伸縮性のある特別な素材で
できている。
着けることで自分がΩだと知られてしまう代わりに
自分の意思に反して番にされる事はなくなる。
数日前の事件のような恐怖は消える…。
「それ、着けてほしいんだ」
「俺、βだって…」
「分かってる。でも今度の職場では隠さないで
Ωって言おう。後からじゃ 契約だとか色々
面倒だし、気持ち的にも言いにくくなるだろ。
いい機会だと思うんだ…」
和真の顔から笑いが消えた。
「…それね…俺の指紋認証とカズのパスワード
両方ないと外せないの
無理やり切られたり、継続的に力が加えられたり
したら、俺の携帯と警備会社に連絡が行って
3分以内に通報解除のパスワードを送らないと
警察にも連絡が行って、GPSの場所に
人が駆けつける」
「すごいね。スパイ映画みたい…」
「和真が危険を感じた時に、自分から通報する
事もできるよ。その時計に決められたパスコード
打つだけ」
「守られる変わりに、プライバシーもさらす
って事ね」
「そういうことになるね」
柊生がワインを飲んで視線を落とした。
和真の反応は、ある程度予想していた。
「カズが倒れて傑に来てもらった日あっただろ?
あの時、俺が言ったこと覚えてる?」
和真は黙ったまま小さく頷いた。
「番になりたいって気持ちは今も変わらないけど
あの日傑にめちゃくちゃ怒られて…」
「…え?」
「今そんな話しをするなんて、どうかしてるって
それで安心したいのは俺の方だって…
頭ハンマーで殴られた気分だったよ」
「………」
「傑の言ってた事は間違ってない。
でも、あんな暴力からカズを守りたいって
気持ちも嘘じゃないんだ」
「その結論がチョーカーなんだ?」
「……うん。でも、もうひとつ理由はあるよ」
「理由?」
「以前は俺もチョーカーを着けるリスクの方が
怖くて、着けろって言えなかった…。
でも…最近思うんだ…
カズ、Ωの顔になってきてるって」
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