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「は? 顔?」 「上手く言えないけど、出会った頃よりΩっぽい ってゆうか…しょっちゅう俺とやってるせいかも しれないけど…色気というか…もうβには見えない」 「……はっずっ」 「どうせ回りからΩだと思われるなら、リスクよりも 会社や友達に配慮してもらえるメリットの方が 多いんじゃないかって思うんだ… 確かに偏見もあるし、めんどくさい奴や嫌みな 奴はいるだろうけど…そんな奴はきっと…カズが βだろうとΩだろうと、αだって言っても めんどくさい奴なんだよ」 和真は小さく頷きながら静かに聞いていた。 「……実は、俺もちょっとは考えてたんだ 政実に話そうって思った時から…。 でもずっとβって言ってきたから… なんか勇気というか…踏ん切りがつかなくて …柊生が切り出してくれてよかったかもね」 「…カズ…」 「今回の強姦未遂も…本当にヤバイやつって 俺がβだろうがΩだろうがどうでもいいんだな って…それなら俺がβって言い張る意味って 何なんだろうって」 和真が自嘲気味に笑って、ワインを一気に 流し込んだ。 「うん。会社はいいよ。契約変えてもらえるか 確認してみる」 「嫌な目にあったらすぐ言えよ」 「…ハイハイ」 「ん?会社は?…は、ってどういう…」 「チョーカーは勇気いるなぁ…。知り合い以外にも Ωだって主張して歩くみたいでさ」 和真は膝の上に肘をついて顔を手で擦った。 柊生は深く息を吐いて、そんな和真を見つめた。 「その気持ちはなんとなく分かるよ」 「…分かってても、着けさせたい?」 「…うん…」 「……そ…」 気まずい沈黙が流れる。 和真はチーズを包んでいた紙を玩んで 視線を合わせずに考え込んでしまった。 でも柊生は折れる気はなかった。 「俺、、俺から事件の話しするのは今日が 最初で最後だから聞いて」 和真が少し身構えたように柊生を見て 喉がごくりと鳴った。 「情けないけど…俺、まだ…その傷を 直視できないんだ…」

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