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一瞬和真が唇を噛んで眉を寄せたけれど、 柊生から目を反らす事はなかった。 「まだ、毎日夢も見るよ。 悔しくて…あの日に戻って やり直したい」 「…ごめん…」 泣き出しそうな小さな声で謝られると 柊生の方まで涙が出そうになる。 「あ!あやまったな。 この件で謝るの、なしって言っただろ!」 瞳が潤んだのを誤魔化そうと、わざと大きな 声をだすと、和真が反射的に、ごめん、と もう一度 呟いた。 「俺さ… 未遂じゃなくて… カズが本当に 番にされてたら きっと… …きっとアイツ殺してた」 その時、和真の目からボロボロと 涙がこぼれた。 前触れもなく、突然。 柊生を見つめたまま。 とめどなく溢れた涙は頬をつたって 和真の顎から雫になってポタポタ 膝の上に落ちて染みになる。 柊生は思わず息が詰まって何も言えなくなり 和真がうつ向いて顔を隠しても 黙ってそれを見続けた。 すぐ駆け寄って肩を抱きたい衝動と このまま泣いている和真を見続けたいような 不思議な感情で動けずに。 声も出さずに泣く和真が綺麗で。 少しの時間、見蕩れていた。 涙が止まらないようで鼻をシュンシュンと 鳴らし始めたので、柊生は少し笑って立ち上がり ティッシュケースを持って戻ると、今度は隣に 座って肩を擦った。 「何の涙なの?」 聞くとティッシュで顔を拭きながら 首をブンブン振った。 「…分かんない」 ー 俺を気づかっての涙かな? それほどまでに想われた、歓びの涙かな? ただただ、色々な思いが溢れて流れた涙かな? 何でもよかった。 自分の前で泣いてくれて嬉しいなんて おかしいだろうか。 全部ここに吐き出してほしいと思った。 柊生は、涙が止まるまで和真を抱き寄せて 子供をあやすように、背中をポンポンと叩き続けた。

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