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「あ、ホントだ。外れない…」 「おいで」 和真が柊生の前に座って背を向けた。 柊生が自分の指をスキャンして、パスワードを 入力すると、首のロックがカチッと小さな音を たててはずれた。 「デザインも色も気に入ったのがあれば 増やせるよ」 「……柊生嬉しい?」 「………」 「俺がこれしてたら安心?」 じっと見つめて聞かれると柊生はなぜか 切なくなる。 和真が本当に嫌だと思うなら、無理やり 着けさせたくはない。 でも、仕事が始まり1人で出かける事が増える 和真が心配でたまらない。 あの日の和真。自分の車から降りて 約束の場所へ向かってゆく 和真の後ろ姿を何度も思い出した。 どうしても嫌なら仕事の帰りだけでも ハイヤーを使わせようか… ……もっと嫌がりそうだな…。 「いいよ。着ける」 「え?」 答えに窮する柊生に向かって 突然和真が軽く言うと、柊生の手から チョーカーを取って自らカチリと首に着けた。 「柊生の物って感じ?」 首を傾げて誘うように笑った。 「いいの?」 「慣れたら何て事ないのかも…。 中学の時とかセキュリティのついたチョーカー してるΩ何人かいたけど、皆自慢気だったな ご子息、ご令嬢ばっかりだったけど… 守られてるって思うと強くなれるんだなって…」 「守るよ」 「守ってくれるのは警備会社でしょ」 「カズ君、それは言っちゃダメ…」 「ウソだよ。 大事に思ってくれて …ありがと」 「カ、カズ~~~!」 たまらず抱きついてソファーに押し倒し そこらじゅうにキスをしまくる。 「ちょっと、こら!バカ!」 作務衣の下まで下げられそうになって 和真が足をバタつかせて抵抗した。 「ここじゃやだ?ベッド行く?」 「…違う」 「…?」 「ちゃんとキスして」 目を閉じて、ん、と顎を上げる。 柊生は嬉しさで心臓がフルフル震えた気がした。 そっと啄むようにキスをすると 和真がふっと笑う。 「本当の番になるまでのね… それまでの繋ぎでしょ?」 囁くように言われた言葉は 以前指輪を渡した時に、柊生が言った言葉だ。

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