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エピローグ

和真と出会って1年が経った。 もうじき2人で過ごす2度目のクリスマスを 迎えようとしている。 「コーヒー入れるけど飲む?」 「あ、うん。ありがとう」 和真の新しい職場では週に何度かの在宅勤務が 許されていて、今日もリビングで朝から真面目に パソコンに向かっている。 俺も余裕がある時は有給を使い、一緒に家で 仕事をして、一緒に過ごす時間を作っていた。 時々口の中で何か呟きながらパソコンを叩く 和真の横顔を眺めながらコーヒーを入れる。 「幸せだなぁ…」 1人で頬を緩ませて、つぶやいた。 年が明けて、和真の仕事がスタートして やっと自分のペースができてきた頃、 警察から連絡があり、和真に乱暴した犯人が 捕まった事を知らされた。現行犯だったらしい。 それを聞いた和真は、またしばらく不安定に なったけれど、日々の忙しさが和真を引っ張り 戻してくれた。 夏前には和真を妹に会わせ、それから2ヶ月と空けず 母にも紹介した。 最初は和真の存在を訝しんでいた2人だったが 和真はすぐに2人を落としてくれた。 妹の美織は特に和真を気に入り、何かあると 俺ではなく和真へ連絡してくるようになり みおりん、かずたん、、などと呼びあって 少々 勘に障る。 和真の生い立ちや、高卒という経歴は ウチのような家族には衝撃と言ってもいい。 その情報だけが先に入ってきたら受け入れる事は 難しいだろう。 それが分かっていた俺は何の情報も渡さず いきなり恋人だと紹介した。 和真は、自分の事をよく思っていない人間の 懐に入るのが本当に上手だ。 媚びたり、何か特別な言葉を言うわけでもないのに フラットで力の抜けた和真と何度か会うだけで いつの間にか、和真のあら探しをやめてしまう。 とにかく今では2人はすっかり和真の応援隊だ。 父も、母がきっと上手く誘導している。 会って話せばきっと父もすぐに和真を気に入って くれる。そんな気がしていた。 その先からが本当の戦いになるだろうけど。 何だか意外と簡単に和真は祖父の心にも スルッと入り込むんじゃないだろうか? そんな淡い期待も感じていた。

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