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第5話◎待ち合わせにはご用心

今日は約束の土曜。 学校の奴らに 見つからないように しなきゃならない。 後々面倒な事になりかねない。 雪村はともかく、 的木先生に休日に 会っていたなんて知られたら 学校に居られないだろうな。 そして、俺たちは今、 学校からかなり離れた 公園に来ていた。 「此処でいいんだよね?」 その場所はタクシーで 三十分程かかる所だった。 「雪村が寄越した 地図だと此処のはずだ」 どぉやら俺たちの方が 早く着いたみたいで 雪村たちはまだ来ていなかった。 二十分後、やっと二人が来た。 運転してるのは 的木先生で雪村は 助手席に座っていた。 「先生たち五分遅刻です」 慎が膨れっ面をして言った。 「俺たち 二十分前から待ってたんですよ」 俺も拗ねた口調で言ってみた。 「え? そんな前から待ってたの!?」 「はい」 肯定の意味で慎が 返事をした。 「そりゃ悪かったな」 謝る雪村なんて貴重かも。 「まぁいいけどさ」 「それで、何処に行くんですか?」 慎は何時も俺が 思っていることを 代弁してくれる。 「まだ決めてないんだけど、 とりあえず乗って」 そぉ言われたから 慎と二人で後部座席に乗った。 「お邪魔します」と 二人で言ってみた。 「どぉぞ」 俺たちの台詞が 可笑しかったのか 的木先生は小さく笑った。 「なぁ、番号交換しないか」 いきなり雪村が提案してきた。 「そぉだね」 的木先生まで便乗している。 「いいのかよ? 雪村も的木先生も、 教師が生徒にケー番教えてちまって」 「お前ら二人にだけな」 学校にいる時より 二人が子供っぽくみえる。 まぁ、口ではこう言ってるが 俺の内心は 〈的木先生のケー番ゲット❢❢〉と かなり興奮気味だけどな。 「誰にも言うなよ」 誰が教えてやるか。 「言わねえよ」 ファンの奴らには 絶対に知られちゃならない。 「笹山もだぞ?」 「わかってます」 「じゃぁ赤外線するか」 四人で番号交換をした。 「行き先はまだ 決まってないからドライブしよう」 的木先生が車を発進させた。 着いたのは隣の市。 雪村が「市内にいて生徒に 見つかるのは嫌だ」とぼやいたのを 慎には聞こえなかったみたいだ。 「二人共、お腹すいてない?」 言われてるみれば、 昼飯がまだだったなぁと思い出す。 「お腹すきました」 二人でハモると 的木先生がまた笑った。 「静は?」 ついでとばかりに 雪村に訊いた。 「俺はついでかよ❢❢」 雪村自身もそう思ったらしい。 「まぁ、腹はへったけどな」 本気で怒ってるわけじゃない。 「じゃぁ、 俺のおすすめの店に行こう」 「何の店ですか?」 的木先生のおすすめとは 何の店だろうか? 「イタリアンの店なんだけど 二人共好き?」 俺の好物だ。 「はい。 大好きです」 慎と二人で応えた。 まぁ、慎は どっちかというと 和食の方が好きだけどな。 「よかった。 ご飯食べながら 俺たちの話をしてあげるね」 「ありがとうございます」 的木先生は学校の人気者だが、 本人はまったく気付いていない。 車を五分程走らせて 的木先生おすすめの店に着いた。 「喫煙席で大丈夫?」 最初は雪村のためかと 思ったが、どうやら 的木先生も喫煙者らしい。 でも、学校では吸ってないよな。 「雪村が吸ってるのは 知ってますけど、 的木先生も吸うんですね」 「学校ではあんまり 吸わないようにしてるんだよ」 何でだろ? 「理由(わけ)を訊いても?」 「秘密」 唇に人差し指を 当ててシーのポーズをした。 「それで、なんの話からする?」 ¢。゜¢。゜¢。゜¢。゜¢ 知りたいことは沢山あるが 欲張ってはいけない。 「二人が高校生の頃の 話が聞きたいです」 雪村と的木先生は どんな高校生だったんだろうか? 「わかった」 きっとモテたんだろなぁ。 「まず最初に、 俺も静も真面目な 生徒じゃなくて よく二人でよく怒られたよ」 それは意外だ。 「雪村は わかりますけど的木先生も?」 「うん。 因みに俺たちは 河路の卒業生なんだよ」 他の生徒が 知らないことを知れて嬉しい。 「じゃぁ、 先生たちは僕たちの先輩ですね」 そういうことになるのか❢❢ 「煤宮先生は 俺たちの担任だったんだよ」 あのおじいちゃん先生が 雪村たちの 担任だったなんて吃驚だ。 煤宮先生は六十過ぎの おじいちゃん先生で 色んな相談にのってくれるから 生徒たちの間では 的木先生の次に人気だ。 「優しいですよね」 慎がしみじみ言うと 的木先生は ちょっと困り顔をしてから 「あぁ、今の生徒には 優しいよね」と言った。 今の? 「俺たちが学生だった頃は とっても怖かったんだよ」 「なぁ静」 同意を求められた 雪村は煙草を灰皿に 押し付けて消した。 「そぉだな、何時も怒鳴ってたしな」 あの煤宮先生が 怒鳴ってるところなんて 想像できない…… 「意外だね」 慎も同じ事を思ったみたいだ。 「だよな」 俺たちには優しくて 先生というより 本当のおじいちゃんみたいな感じだ。 「きっと、俺たちの時は 息子みたいな感じで、 今の皆は 孫みたいな感じなんだと思う。 煤宮先生も歳とったから 少し丸くなったのかもね」 その後、雪村が意外にモテたとか 二人で同じ人を好きになったとか、 色々な話をを沢山聞かせてもらった。 その後食べたパスタは とても美味しかった。 「ごちそうさまでした」 二人に向かって言った。 「美味しかった?」 「はい、とても 美味しかったです」 あのカルボナーラ 家で作れるかな? 「それはよかった」 学校では見れない二人がいる。 まず、私服だし 煙草を吸ってる的木先生とか ある意味レアだよなぁ。 そして、スーツの時と 違って実年齢よりも 若く見えるし、 下手すれば大学生でも 通りそうだ。 そんな心の声を またしても、慎が 言葉にした。 「今日の先生たちは 大学生くらいに見えますね。 雪村先生も何時もより 格好いいです」 雪村も黙ってりゃ 格好いい部類に入るだろうな。 「それは嬉しいが 《何時もより》は余計だ」 「ごめんなさい」 素直だなぁ。 「まぁいいけどな」 この空気が気持ちいい。 「そぉだ、今、 三組でやってるGAMEなんだけどさ」 話が戻ったな。 「染野が始めたアレですか」 内容が気になるのか? 「うん。 何でそんな事 始めたんだろうと思って」 内容じゃなくて 理由(わけ)を知りたいのか。 「あいつは昔から 気紛れでしたから、 今回のGAMEも意味は ないと思いますよ」 染野のやる事は 何時だって無意味なことが多い。 「強いて言うなら 単なる暇潰しですよ」 金持ちの考えることは さっぱりわからない。 「中学の時から ずっとそうなんです」 五年も一緒だが 理解不能なのは変わらずだ。 「三人は中学から一緒なの?」 「俺はそうですね。 慎と染野は 幼稚園からの 幼なじみなんですよ」 俺は染野にしてみれば 邪魔者なんだろう。 「なぁ? 慎」 「うん、だけど 僕には聡君の 考えてることはわからない」

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