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第14話 変装と対面

 数日後、同じ所に居続けると居場所を特定されやすいからとダニスに言われ、王都の各場所で点在する為に所持してるダニスの部屋の一つへと移動した。  その際、隠し通路を通らないのは、明かりが保ってない場所に突然付けば近隣の人から違和感を持たれる為、通常の兵が行き交ってる道を歩く事になった。  ダニスもアランも変装をしていた為、気づかれにくいとはいえ、とてもハラハラしながら道を通った。が、それよりもアランは今の変装にとても不満を抱いていた。 「な、ん、で、女の格好をしなきゃいけないんだ!?」  部屋と無事にたどり着いて、アランは開口一番にダニスに声を荒げて怒った。  ダニスも黒髪とこの国では目立つ風貌の為、ウィッグを被っていたが、部屋に着くと外してアランの言葉に特に機微もせずに既に置いてあるソファーに座った。 「どっからどうみても男には見えないからだが?」  そう言ってダニスはタバコを吸い始めては、揶揄う様に笑みを浮かべた。  アランは、膨れっ面でダニスを睨んだ。  朝1番起きるなり、訳も分からずに半ば無理やり女装させられた。  長めのブラウンのウィッグは結わず腰まである、服はレースの襟が付たブラウスに、腰を絞って背中にはリボンが軽く飾られている。足首近くまで長さがあるものの少しふわっとしたスカートで、履き慣れてないアランからすればとても風で足がスースーした。  背丈もダニスを見上げるくらいには低い、遠目から見れば確かに対比で男だとは思わないだろう事が余計に悔しかった。  それに、外を出た瞬間部下の一部の人間が、アランの姿を見ては、なんだか頬を赤くして見て来たり、似合ってますよ!って言って来たりしたのに、男のアランとして微妙な心境だった。 「まぁ、そう睨むな。」  ダニスはタバコを灰皿に置くと、アランの腕を掴んでソファーの方へと引き寄せると向かい合った状態で膝の上へと座わった。 「わ、な……!?」  突然ダニスと距離が近くなって、アランの鼓動が跳ねた。  顎を手で掴まれ、ダニスにジッと見つめられるのに、何だが気恥ずかしさを感じつつも黒い瞳から目が離せなかった。 「俺の見立て通り悪くないな」  ダニスは顎から手を離すと、アランの腰に手を回して、もう片方の手はスカートをたすき上げると膝から太腿まで手で撫でながらめくり上げていく。すこしやらしい手付きに、アランはゾクリと背中を震わした。 「へ?…ちょっ……」  どこか楽し気に笑みを浮かべてるダニスを見て、今日は何だかとても気分が良いらしいのか、らしくない。  腰に回った手がゆっくりと体のラインに沿って撫でるみたいに下がっていく、それにぞくぞく体が反応しては、アランはどこかもどかしく感じた。 「ふっ……」  ダニスに抱かれたのは、一度きりだと言うのに、それ以降触られると体がざわつく感じがするようになってしまった。  とはいえ、最近は抱き枕代わりにされる以外は、アランとは距離を保ってるいる様子だった。元々人と一定の距離を置くタイプなのだろう、しかし、何となくだが少し距離を置かれてるような気がしていた。  そんなダニスが、今日は突然こんな様子なのでアランは少し困惑する。気分が良いにしろ、揶揄ってるにしろ、どうしたのだろうか?それでも触てくる手から逃れそうになく、背中を震わす。 「……ふっ……くくっ……」  突然ダニスが、顔を俯かせて笑いを押し殺しだした。しまいには、肩を震わしている。  アランは、揶揄われたと思って顔を赤くしたが、それにしてもダニスの反応に違和感があった。  アランの太腿から手を離して、アランの顎を掴むとダニスは顔を上げて、にこやかに笑った。 「本人以外の前でそんな顔あまりしない方がいいですよ」  アランは、ぽかんと口を開けて呆気に取られた。  違和感どころではない。そんな笑い方本人がする訳がない、言葉遣いも違えば、声のトーンもさっきより高めになっていた。いや、むしろその声は何処かで聞いた事がある。軽い感じのする声のトーンにアランは、1人心当たりのある人物の名前を上げた。 「まさか……ティムなのか?」  ダニスにしか見えないその顔は、にっこりしたまま頷いた。 「そうでーす。オレの変装分かんないっしょ??」  ダニスの見た目のまま、ティムの軽口なのだから、気持ち悪いにも程があった。 「いつから……?」 「朝部屋に入った時から」  ダニスの変装したティムが楽しそうに笑った。  それは、もう最初からという事になる。アランは、本人だと気づかないまま、さっきの醜態を見せてしまった事に、一気に恥ずかしさで顔を赤したの同時に怒りもできて、気づけばダニスに変装したティムの腹に肘鉄をくらわしていた。 「ぐはっ!!!……はは、つい出来心で」  アランは、さっさと膝から降りて、ダニスに変装したティムをじとーっと睨む。 「どういう事か説明してもらいたいな??」 「実は、今日ここに来たのは別の目的がありましてね。人を呼んでいるんですよ。ダニスさんはそのまま会うつもりだったみたいですけど、何かあっても困るんで俺が代わりに」  そう言ってティムはウィンクしたが、ダニスのままされると、あまりに違和感がありすぎて寒気がした。 「……私を連れてきたって事は、私に関係ある事か?」 「そうッス、悪いですがアナタが居ないと交渉にならないのと、俺の安全の為に近くに居てもらいますよ」  何も聞かされていない事に不満はあったが、アラン自身が必要であるなら、少しは役に立てるという事かと、分かった。と返事した。  安全の為なら、たぶん人質として使うのかもしれない、という事は……相手はアランを探してる人物になる。 「思ってたよりあっさり納得するんですね」  不満な顔をしつつも、直ぐに了承した事がティムには意外だったのか、興味深そうにアランの様子を見て来ていた。  確かに、もしかしたら相手に売り渡される可能性だってある。でも、ダニスはアランに力を貸すと言ってくれた言葉は少なくともアランには、それが嘘には思えなかった。 「……信じられないならとっくに逃げ出してる。」  そう答えたると、確かにそうですね、と一応納得した様子だった。そこでティムが何だか微笑ましく笑みを浮かべたのは気のせいだと思いたい。  時刻の指定は特してないらしいが、予想では夜に来ると踏んでいるらしい。つまり正確には約束を取ったという事でも無さそうだった。  アラン王子がダニスが匿ってる証拠として、一目で分かるように、女装もウィッグもしなくていいという事でアランはホッとした。仮にも王子に女装させたなんて前代未聞だな、と他人事みたいにアランは思う。それは、もう自分が王族であるプライドはあってもあまり意味の無いものになっていたからだった。  時は数時間流れ、夕方から夜空に変わる頃だった。  ティム……ダニスに変装したティムが座ってるソファーの壁側からトントンと小さいノックの音が聞こえた。ティムが、アランを手招きするので、どうやら人がもう直ぐ来る知らせの合図らしい。指示通りティムの側まで行くと腕を掴まれ引き寄せる。  また膝の上に乗っかたが、今度は横向きになっていた。 「……これは、必要な事か?」 「俺の安全の為に。……と、ここに居て貰わないと困るので」  アランには、その糸は分からないが、仕方ないと頷いた。 「これ以降は、俺をティムである事を悟らせないよう頼みます。どうやらダニスさんの読み通りの人物が来たみたいですし、一瞬でも気を抜けばバレるかもしれないですから」  ティムの表情が引き締まり一瞬で表情が変わった。アランもその顔に、緩んでいた緊張が一気に張り詰められた。  今からくる人物はそれほどまでの人らしい。いつも相手に限らず揶揄う余裕のあるティムの顔つきが別人の様子だった。  ティムが、目を瞑って数秒後。アランは息を飲んだ。ゆっくりと目を開けた瞬間に、表情、雰囲気、がダニスが重なって見える。変装技術だけじゃなく、そこまで重なって見える事に驚いた。  これが彼の特技なのだろう。  部屋の扉からノックが3回鳴る。 「鍵なら開いている」  声まで似ているのだから、むしろこれで分かる人間が居るのだろうか。完璧にダニスを演じてるティムの返事と共に扉が開いた。 「……まさか、1人で来るとはな。」  扉から現れた人物は、この国の騎士だった。騎士にしては、まだ若い風貌の短い髪型のブラウンから覗く緑色の瞳がこちらを見て、険しい表情をしながら部屋へと入ってきた。  どうやら、他の兵士達は居ないらしい。 「それは、こちらのセリフだ。慎重な貴様が1人で待ち構えてるとは思わなかったが……やはり貴様が関わっていたか。」  状況がいまいち理解できかったが、口を挟まない方がいいとアランやりとりを見守る。 「分かっていたから探らせていたのだろ。クリス・レブスキー」

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