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第一章・18話

 電車がカーブし、人の波に押されてさらに二人の体は重なり合った。  その動きに乗じて公彦は葵の耳朶をそっと噛み、ふぅと息を吹きかけてみた。 「んッ」  ぴくん、と体が跳ねた。  いたずらを咎めるような、眼をされた。  しかしそれは、公彦の心に、体に、完全に火をつけることになってしまった。 「葵」  耳元で囁き、腰に当てた掌を滑らせた。ゆっくり、じっくり撫でさする。 「や……ッ!」  まさか、電車の中で!  体を弄られながら、葵は悲鳴を呑み込んだ。  まさか、公彦を痴漢と捻じ上げるわけにはいかない。 「ちょ……ダメ……」  公彦にだけ聞こえる小さな声を上げたが、やめるどころか調子に乗って、その手がニットの下にまでもぐり込んできた。 「ぃやッ」  じりじりと、上がってゆく公彦の手のひら。  やがて胸まで昇りつめ、爪先で小さな乳首をカリカリと引っ掻きだした。

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