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第二章・4

 カップ麺をすすりながら、肇はつぶやいた。 「不味い」  肇の母親は、料理がとても巧かった。  彩り、香り、味、歯ごたえ、舌触り、喉ごし。  どれを取っても、逸品だった。  小学生の頃は給食がひどく不味く感じられ、食べることができなかったくらい、母の味は肇の味覚を支配していた。  母が若くして亡くなってからは、その味がなおのこと肇を縛った。  どこかに、いないか。  母さんと同じ味が出せる人は。  肇は、孤独だった。

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