63 / 102
第三章・8
ぶう、と秀郎はビールを吹いた。
「な、何で知ってるんだ!」
「僕も買いました! 遠藤先輩のマンガ、凄かったです!」
「う……」
褒めてくれるな、と秀郎は苦いビールをすすった。
「それは俺の仮の姿だ。今から俺は、真の遠藤 秀郎になるんだからな」
「真の?」
見てくれ、と秀郎が示したデスクには、アナログなマンガ制作道具が。
「次回のイベントでは個人参加で、全年齢向け青春学園純愛ものを描く!」
「先輩、すごい!」
美知は、ぱちぱちと手を叩いた。
「そんな売れそうもないジャンル、よく決心しましたね!」
「う……」
言ってくれるな、と秀郎は苦いビールをすすった。
ともだちにシェアしよう!