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第三章・16

『先輩、最近ちゃんと恋したことありますか? 実体験がないから、恋愛もの描けないんじゃないですか?』  こんな、鋭いツッコミまで入れてくる。  そして……。 『僕でいいなら、恋人役を務めてあげてもいいですよ♪』  がばぁ、と秀郎はそこまで考えて布団を蹴った。  このまま寝ていては、柳瀬と俺とのいかがわしい妄想に走ってしまう! 「描くんだ! とにかく、一コマ!」  どこからでもいい。  初めの一コマでなくても、描きやすいシーンからでも! 「……描けないッ!」  そんなことを繰り返す、秀郎の朝だった。

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