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第三章・28
たまたま好きになった人が同性だったからって、苦しむような世の中は辛い。
だから、せめてマンガの中でだけは、キャラに自由にのびのびと恋愛を楽しんでもらいたい。
そんなことを、美知は語った。
「すごいな、柳瀬は。ちゃんと、マンガにメッセージも込めてるんだ」
「いえ、僕なんか、まだまだ……」
照れて、もじもじと言葉を濁す美知が、本当に可愛い。
到着した美知のマンションの前で、秀郎は静かにゆっくりと彼に顔を近づけた。
「せ、先輩」
「嫌? ダメ?」
「こ、これは」
「取材、だろ?」
「はい……」
二人の唇が、そっと重なった。
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