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Trac02 All I Want for Christmas Is You/マライア・キャリー①

『ーーーークリスマスに欲しいのはあなただけ』 マライア・キャリー /All I Want for Christmas Is You 「そういうことだから、最終日は遅くなる」 家に帰ってからユウジにそう言うと、 「お前なあ・・・」 と頭を抱えていた。 「最低だな。ゲイのくせに」 「なんだよそれ」 アリサと同じようなことを言うんだな。 ユウジはため息を吐いた。 「女泣かせたら承知しねえからな」 「ハア?手ぇ出す訳ねえだろ。女には興味ねえし」 「思わせ振りな態度を取るなってことだよ」 いや、さっぱり身に覚えがない。 ユウジはそうだ、と言ってカレンダーを指差す。 「今度の土曜日、空いてる?」 「空いてる」 「ちょっと買い物付き合ってくれないか」 「いいよ、買い出し?」 「それもあるけど、カホのプレゼント」 25日を指差す。なるほど。 「カホには言うなよ」 ん?待てよ、それひょっとして 「一緒に行かねえの?」 期待に胸が疼いた。一応確認してみる。 ユウジはけろりと言う。 「お前と2人な。カホを保育園に送ってからな」 うわ。 うわ、マジか。 わかった、と言いながらにやけそうになるのを必死で堪えた。 「風呂入る」 顔を隠すように洗面所に入った。扉を閉めた途端、頬がだらしなく緩んできて、手が勝手に小さくガッツポーズをしていた。 土曜日。 俺は大型ショッピングモールの、チェーン店のコーヒーショップでスマホを弄っていた。 ユウジはカホを保育園に送って行ってから来るそうだ。いつもと違うことをして気づかれたくないって言ってたけど、そこまで徹底しなくていいと思う。 店の前を行き交う客は、休日だからか家族連れの客が多い。吹き抜けのデカいクリスマスツリーや天井に渡された赤白緑のリボンが、これでもかとクリスマスのムードを前面に押し出している。 クリスマスソングには辟易して、イヤホンでロックを聞き始めた。 でも実のところ音楽やスマホの内容なんて頭に入って来なかった。待ち合わせの時間やユウジからのLINEが来ないか、何回も確かめてしまう。 アプリで会った相手と待ち合わせする時はひたすらボーっとしているだけなのに。 数分待ち合わせ時間を過ぎただけで、LINEを開いてしまっていた。メッセージは届いていない。 大方カホがゴネているんだろうけど、ソワソワして落ち着かない。 こっちからメッセージを送ってみようかと、もう一度LINEの画面を開くと、 「悪い、遅くなった」 とユウジが人混みの間を縫って歩いてきた。 心臓が強く脈打つ。黒いテーラージャケットに白いシャツがスタイルのいいユウジの体型を際立たせている。 思った通り、カホが今日に限ってぐずぐず言ってたみたいだ。 一緒に歩き始めるとなんか変な感じがした。 ユウジと並んでいる側がざわざわする。ただ歩いているだけなのに。 それに、なぜかユウジの顔をまともに見られない。 そういえばユウジと2人だけで出かけるなんてよく考えたら初めてな気がする。 それに気づいてしまったら、なんだか動悸がしてきた。 なんてこった。 初対面の相手とセックスするって時でも何とも思わないのに。この感覚は久しぶりだ。 軽く緊張している。

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