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Trac05 Like It Christmas/ジェイムス・ブラザーズ①

『ーーーー君は毎日をクリスマスみたいな気分にさせてくれるのさ』 ジェイムス・ブラザーズ/Like It Christmas まだ楽器店のバイトは日数が残っていた。ちょっと気まずい思いを引き摺りながらロッカールームに入ると、早速アリサと目が合った。 「辞めたかと思った」 「は?なんでアンタなんかの為に辞めなきゃいけないわけ?」 付け睫を羽ばたかせながらエプロンの紐を結ぶ。 「でも、そのうち辞めるかもね。プロダクション入ったの」 「マジで?よかったじゃん」 「あのバーってさ、音楽業界の人も出入りしてたみたいなんだよね」 アリサは唇を曲げて変な顔をしてた。 そういえば後藤がそんなようなこと言っていた気がするな。 「それで、プロダクションの人に紹介してくれたみたいなの」 アリサはますます複雑な表情になる。 名刺を2枚見せてきた。 目を見張った。一枚は、俺も見覚えのあるものだった。 「えっと、それってもしかして」 「・・・八田さん」 アリサのなんとも言えなさそうな表情の訳をやっと理解した。誰がプロダクションの人間だったんだろう。アイツも相手を取っ替え引っ替えしてたからな。 「別にいいじゃん。こんなこと滅多にないんだし」 「まあね」 アリサは少し伸びた金色の前髪をピンで留める。 「髪切ればいいじゃん」 「伸ばすことにしたの。これからは男の子みたいに短くする必要もないしね」 「ふうん。似合ってたけどな」 「それよ、それ!」 アリサは人差し指で俺を指す。なんだよ。 しかめっ面をしたままの俺の顔をじぃっと見て、それからふっと息を吐く。 「あーよかった!こんな鈍感で無神経なヤツと付き合わなくて!」 アリサはわざとらしくデカい声を出した。 「誰が何だって」 「知らない。アンタなんかさっさとユウジさんに告るだか襲うだかして振られちゃえ」 アリサはなんかすげえ事言ってロッカールームを後にした。 と思ったら、またひょっこり顔を出す。 「いつか絶対ライブやるから。絶対来てよね」 「わかった」 「別にアンタの為なんかじゃないんだからね、自分で決めたことなんだからね!」 「わかった、わかったよ」 アリサはフフッと悪戯っぽく笑った。 それから小走りで足音が遠ざかっていく。 アイツ、あんな顔もできたんだな。今まで見てきたアリサの顔の中で、1番魅力的に思えた。

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