5 / 107
第一章・5
「神くん、優しいんだね」
空は、雅臣の手を取った。
冷たく、乾いた手だった。
その途端、空の手を長田が払った。
「汚い手で馴れ馴れしく触るんじゃない!」
そんな長田の剣幕に、空の瞳は元の虚ろな色に戻ってしまった。
驚いた風の雅臣に、長田は言い訳のように説明する。
「小室 空は、Ωなんです。校内一の、堕落したΩ」
Ω、か。
雅臣は、ならば長田の態度も仕方ないか、と考えた。
長田も、雅臣と同じαだ。
Ωを毛嫌いするαが、時には存在する。
ともだちにシェアしよう!