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第一章・11
昼休み、雅臣が食事を終えるのを見計らって、空は声をかけた。
「神くん、今からちょっといい?」
「構わないけど」
「君に、ピアノを聴かせたいんだ」
そういう事なら喜んで、と雅臣は空と共に音楽室へ向かった。
ピアノの前に座った空は、長椅子の隣をぽんぽんと叩いて見せた。
「ここ。隣に座ってくれる?」
「いいよ」
二人並んで、ピアノの前へ腰かけた。
鍵盤の上に、静かに指を置いた空は、それと同じくらい静かに語った。
「せっかく知り合いになれたけど、もうお別れなんだ」
演奏が、始まる。
「なぜ? 転校するのかい?」
「うん……」
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