25 / 107

第一章・25

 3ヶ月間、空は雅臣の言った通り、体力づくりと礼儀作法の習得、これまで学んで来なかった知識を身につけた。  それぞれに専属のコーチや教師がおり、手取り足取りみっちり教えてくれた。  過密なスケジュールの中で安らぐひとときは、ピアノを演奏する時間と、雅臣とお茶を飲む時間だ。 「昨日、新しいCD聴いてね、弾ける曲が増えたんだよ」 「それはいい。その調子で、どんどん演奏して。春から、ピアノの教師にも会ってもらうから」 「え~! また先生が増えるのか~!」  大げさに肩を落とす空に、雅臣は笑いかけた。 「ピアノに費やす時間が、ぐんと増えるよ。1日8時間くらいかな」 「ピアノが8時間も弾けるの!? やったぁ!」  これが常人なら、げんなりするところだ。  やはり空はピアノの申し子だな、と雅臣は頷いた。

ともだちにシェアしよう!