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第一章・27

 3年が過ぎた。  二人は18歳になっていた。  雅臣は飛び級で大学を卒業し、空はピアノの腕を上げることに一生懸命な毎日を送っていた。  修学を終えた雅臣は本格的に父の傍で経営に乗り出し、これまで以上に多忙になった。  空とお茶を飲むことも、週に一度あるかどうか。 「寂しいな」 「何が?」 「こうやって、雅臣くんとお茶できるのは久しぶり!」 「それって、寂しいのかな。嬉しいんじゃなくって」 「滅多に会えなくなったことが、寂しいんだ」  ピアノもスランプだし、と溜息をつく空。  お茶が、どんどん冷めてゆく。

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