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第一章・28

 空のスランプは、ピアノの教師に聞いていた。 「演奏自体は、完璧です。ただ……」 「ただ? 何か問題が?」  空は、一度聴いた曲は耳コピーで奏でることができる。  しかし、そのコピーが問題なのだ、と教師は言う。 「演奏家の特徴まで、コピーしてしまうんです。彼特有の色が、出せないでいるのです」    一流の演奏家の真似は、できる。  だが、自分自身の演奏が、できない。  それが、空の抱える問題だった。 「私だって、スランプだよ。経営方針を誤って、父に叱られてばかりだ」 「優秀な雅臣くんも、スランプになったりするんだ」 「自信喪失してるよ」 「お互い、大変だね」

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