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第一章・31
「これなら、最終日の演奏会も期待できそうだ」
「演奏会。誰の?」
「空くんだよ。君はこのドイツで、華々しくデビューを飾るんだ!」
「う、嘘ッ!」
途端に萎れてしまった、空の心だ。
「演奏会、って大勢の人の前で弾くんだろ? やったこと、ないよ」
大丈夫。自信を持って。
そんな雅臣の声も、慰めにしか聞こえない。
「まぁ、第一はこの旅行を楽しむことだから。失敗もオーライ、くらいの気持ちでいなよ」
「他人事だと思って~」
空は、ぷぅと頬を膨らませた。
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