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第一章・32

 それでも、旅行は楽しかった。  著名なピアニストの演奏会を聴きに行ったり、オペラの観劇をしたり。  そして、美しい所をいろいろと訪問した。  古城、自然公園、石畳に並ぶ露店の数々。  どれもが、空の心を潤した。  紅葉の川辺を、雅臣と散策した。 「夕日がきれいだね」 「……」 「雅臣くん?」 「空の方が、綺麗だ」  え?  今、何て? 「キスして、いい?」 「え、あ。あ、あ……」  そっと、雅臣の唇が空に重なった。

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